New Nordic Foodと蘭子と蝶と闘争
デンマークのフード周りは、最近賑やかになっている。星を取るレストランも増え、海外から注目もされるレストランなんかも増えてきた。日本の「ユズ」や、「旨味」と言った言葉が聞かれるようになったのも最近だ(デンマークの食事情)。そんな新しいデンマークのレストランでは、 旧来のどてっとした大味料理から、New Nordic Foodに代表される新しい北欧料理運動に影響され、地元食材を活用し、素材の味を生かす方向に変わってきている。日本の懐石に影響を受けるシェフも多く、シンプルかつ大胆な作風は、日本人も楽しめるところが多いのではないかと思っている。値段もピンキリ、作風も多様性に富んでいるので、お気に入りが見つけられるはず。ニューノルディックフード、ゼラニウム再びやその他新北欧料理、未体験の方は是非。
デンマークの学校では親が教師になる日がある
"Parents Teacher Day!!"なるもののメッセージが父兄SNSに小学校1年生の娘の担任から送られてきたのは、1ヶ月ほど前だっただろうか。
木曜日から来週の月曜日まで、教師研修旅行でイタリアのフィレンツェに行くそうで、木曜日は、「保護者が先生になれる日!」いぇい…。「私たち教師はいないので、親たちで企画構成してお願いねっ」
オンラインでは、メールが飛び交う。数人の親が率先して、"じゃあ、私は音楽を教えましょう、私はサイエンス、私は体育を"...となるところが、デンマークらしい。そこで、何も言わずに沈黙を守る親がいるところも、これまたデンマークらしい。
デンマークの学校は、常時こんな風で、日本的感覚では、ゆる〜い学校教育であるのだけれど、それでも、一応動いて、子供は育つ。そんな学校の国は、一人当たりのGDPは日本よりもはるかに高く、幸せと感じる国民を創り出している。
同時にデンマーク的感覚を100%備えているわけではない私は、折々に触れ見聞きし、親としての(デンマークの)常識、義務への対処を迫られることに、大きなストレスを感じざるを得ない。同時に、デンマーク学校のユルさから感じる娘の教育への一抹の不安と、対照的なデンマーク教師のプロフェッショナリズム対応に目眩がしてくるわけだ。ある意味、他の親の対応からは、(1週間、研修旅行で、親にしわ寄せが来ても)社会的には認められる行為であることがわかる。「ミッドナイトセッション」チキさんのゲストにきていた哲学者の國分さんというかたが、イギリスの学校について報告していたが、形はどうあれ、教育ってその国の生き方に対する常識的価値観が如実に表れるようだ。
そして来週の月曜日は(まだ先生イタリアだから)休校。今からエネルギー蓄えておかないと。
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未来の図書館の姿 その2:Ørestad biblioteket
デンマークのリビングラボ
昨年末に執筆した記事が、デンマーク日本人会の会誌に掲載された。題して、「福祉テクノロジーを醸成、リビングラボの挑戦」。デンマークにおける福祉テクノロジー事情と新しい実証実験のカタチ「リビングラボ」について執筆したものです。見開き2ページの短い記事なのだけれども、新しい技術を社会に導入する際の課題はどのようなものなのか、さらに社会における技術の導入をより望ましい形で実現するためにデンマークが積極的に採用する方策「リビングラボ」とは何か、という社会的要素の強い先端技術の紹介と、リビングラボの導入的な記事になっています。
一部を抜粋すると、
技術的優位性があっても、その技術の本質が理解されるか、技術をうまく社会のニーズと融合させることができるかどうか以外と難しい課題である。技術を社会に導入するときの課題としては、技術の背後にある意図を、その技術を見ただけ、また時間の経過を経ずに理解するのは非常に困難である、また、状況を切り離して理解を試みても、本来の意味づけを理解するのは困難である、といった点が挙げられる。
技術と人との複雑な関係に橋渡しをしようとする興味深い試みが、北欧や欧州全体、そしてデンマークで盛んになっています。それは、技術を社会に大規模導入する前に、実際に生活の場やそれに近い形で、関係各所を巻き込んで使ってみよう、使い込んでみよう、そして改良してみよう。そしてそれを満足するまで繰り返し、トコトン最上の形を追い求めようという反復のイノベーションの試み『リビングラボ』です。リビングラボは、一般人を含めた利害関係者を巻き込むための工夫を提供し、長期的視点で社会の中の技術の位置付けを探る試みです。
さて、デンマークは、積極的に産官学連携を進めていて、実証実験なんかも積極的に行っているわけなんだけれども、最近、このリビングラボが産官学連携であちこちに生まれてきている。
タイミングよく、日本企業から依頼があり、2015年度に日本企業の依頼で、在外研究でいらしていたK教授と一緒に、北欧を中心とした欧州のリビングラボの現状を調査し、実際に足を運び、インタビューなどを実施してきた。年度末を控え、その報告書が完成間近だ。
リビングラボについては、知らないわけではなかったけれども、改めて調査してみると、本当に興味深いケースがたくさんあった。デザイナーのK教授と私の関心事は少しずつずれていることもあって、より広範囲でカバーすることができたと思っている。一般に公開できるようになるかはまだ未定だけれども、ぜひ多くの人に読んでもらえる形になってほしいものだ。そうなった場合には、また報告させてください。
今回の調査には入れることはできなかったのだけれども、そのほかにも面白いリビングラボがデンマークにはたくさんある。特に最近興味深いと思っているものの一つは、コペンハーゲン市のスマートシティの取り組みだ(DOLL、Albertslund Living Lab, Lighting Metropolis, Gate 21, Copenhagen Solution Labなど事例はたくさんある)。例えば、光に注目したDOLLは、街路灯などの光を活用し、情報ネットワークをメッシュに張り巡らせ、都市全体データ基地化してしまうという計画を立てている。コペンハーゲン市及び一帯には、何箇所もリビングラボが設立されており、オフィス街や住宅街の一角が、リビングラボになっている。光通信のハブが設置されている場所もあり、その光通信(Lifi<-WIFIならぬ光FIだ)を使って通信すると、スターウォーズ全6作、HDバージョンが、20秒でダウンロードできてしまう速度だそうだ。
光をゲートウェイにすることでできることがたくさんあるんだと、改めて感心。光通信素晴らしい!街路灯の取り換え時期を迎えたコペンハーゲン市は、インフラ再整備の一環として、将来を見越したネットワーク整備も同時に行っていて、こんなところに、フレキシブルで効率性重視、横連携を進めるデンマークの強さが見えるのかも。
そのほか、リビングラボでは、ビックデータの活用なども一つの鍵となっている。例えば、Copenhagen Solution Labは、光というより、どちらかというとビックデータの街における活用が中心だ。
今後も、コペンハーゲン市ではリビングラボという器を使って先端的な技術が段階的に導入されていくことになるだろう。まだ利便性が保証されていないけれども可能性が高い技術やサービスの実証実験ができる場、リビングラボ。リビングラボは、コペンハーゲン生活をもっと楽しくしてくれそうだ。
UXマインドを組織に埋め込むには-レゴ編
LEGOのUXシニアアーキテクトから、レゴ内部にいかにUXマインドを埋め込み、IT開発に活用できるような文化を創り出していくか、ということに関して話を聞いた。
デザイン手法を導入するのは、特に大企業が対象の場合は、長期計画で進めていく必要があるだろうけれども、話を聞いていて思ったのは、やはりそれなりの王道があって、その王道を地道にやっていくことが必要だということだ。
華やかに我々はデザイン思考を取り入れた!というのは簡単だけれども、一部の人がやりたい使いたいと思っていても組織の文化やプロセスを変えるには至らないし、それができなくては、大企業でデザイン思考を取り入れる価値は大幅に減少してしまう。
レゴの場合、学術的にも産業分野においてもUXをとことん追い求めた経験者が、マーケッタと一緒になって、UXマインドの組織への埋め込みを外堀から埋めていっているところが鍵になっている。
インターナルマーケティングを地道に続け、リーダーシップコミットメントを確保し、企業の作業プロセスに組み込むためのプロセスの変更、ツールの整備、そして教育プログラムや図書室などの見えるところの整備...、身近なところからできる工夫を地道に進めているところに、底力を見た。
ロケットサイエンスは存在しない。
コペンハーゲンの草の根教育
デンマークの国民学校(義務教育の小中学校)は、朝8時から12時半(早くて)、もしくは遅くて14:30に終わる。男女ともに働く社会デンマークには、そのあと学童が提供されていて、この学童(SFOと呼ばれる)は17時に終了する。デンマークの教育費は無料と言われるけれども、保育園や幼稚園やこのSFOは、教育の枠組みではないので、有料だ。だから通ってない子供もいる。