北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

コンセプト・ディベロップメント

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2月から6月までの春学期に受け持っていたITUの授業「コンセプト・ディベロップメント」の口頭試問がようやく全部終わった。この授業は、学生グループが戦略コンサルタントとなり、地方自治体や企業が提供する課題に対しIT関連サービスのコンセプトを提案するというもの。セオリーやメソッドとしては、直球のビジネスモデルキャンバスやバリュープロポジションを学ぶのだけれども、ベースになっているのは、北欧のデザインの考え方だ。学生は、前期にデンマークの共創デザイン(CoDesign)の授業を受講しており、定性的なデータ収集方法や、インタビュー、観察の仕方を一通り学んでる。よって、コンセプトを考え出すためのデータ収集に使われる手法は、CoDesignで学んだものを使うことが多い。企業から提供される課題は、正解がない複雑性の高い課題だということもあり、曖昧に定義された社会課題なども多いので、従来の仮説検証型は向いてないことが多い。つまり、デザイン手法と親和性が高い課題を扱っているわけだ。コンセプトだけれども、それなりにお金の流れや人的コストなども一緒に考えることがテーマなので、単にコンセプトを作る授業には止まらず、それなりにビジネス妥当性も考えられている点が、面白い。

今までの授業では、デンマークの一流企業から中小企業まで様々な企業に参画してもらった。Top Denmark, bObles, ....。

日本でも、特に技術系に強くデザインに関心がある学生たちとこのような授業ができたら面白いと思うのです。どこかでやらせてくれないかな。

 

 

Kokkeriet:美味しい食事

ミシュランにリストされるKokkeriet星一つの常連だ。今回、北欧在住そろそろ13年目にしてようやく訪問した。今まで行けてなかったのはなぜだろう。New Nordic Foodと言われているけれども、他の店ほど目新しさもなく、提供される料理もあまり特徴を感じられなくて、惹かれなかったのがいちばんの要因だと思う。たまたま一人分(!)のディナーチケットがあったので、もう一人分出していくもの悪くないと思って、2人で行ってきた。

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ヨット好きたちの楽園

f:id:jensens:20170725104638j:plainかつて北欧では、セーリングが一般的な趣味として人気があった。個人や家族やグループで、帆船を保有して、近くの港に停泊させておき、週末や長期休みにセーリングに出かける。そんな文化があったデンマークでは、セーリングをするためのインフラもあれば、(デンマークの)ローカル・ルールも整っている。ヨットをする人じゃない限り普段は見えないから気づかないことも多いだろうけれども、デンマークセーリングカルチャーは成熟していて、一歩懐に入り込むと、非常に心地よい。

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障がい者が消える

f:id:jensens:20170719210457j:image障がい者と健常者の境ってどこにあるんだろう?そんな風に考えるようになったのは、デンマークでの障がい者雇用について調べたことがきっかけだったと思う。

今まで障がい者にカテゴリー分けされていなかった人が、例えばADHDと診断されるようになって、いわゆる「支援されるべき人」にカテゴライズされることになったりするのと同様に、今まで発達障害とされてきていたアスペルガの人たちが、訓練と環境を整えることで「普通に」雇用されるようになっている。雇用者が個室を与えたり直接目を合わせて会話しないでも済むような指示の与え方をするなど「支援する」ことが必要だったりするかもしれないけれども、アスペルガの人たちは、時には、その特殊能力ゆえに、高給取りだったりする。

 今はわかっていないけれども、10年後には「障がい」として認知される事項が今は認知されていないがために、健常者としての扱いを受け、苦労している人たちもいるのかもしれない。

結局、普通(ってそもその?だし)とか障がいとか、2項対立に考え線引きして、こっちのグループの人はこれ、あっちのグループの人はこれ、なんかのように判断することは本当はできない。そして、10年後には、障がいという言葉はなくなって、「多様性」に全て置き換わっていくのかも。支援金の額とか、その評価とか難しいな…。

そんなことをデンマークにいると感じるわけだ。

デンマークの美術館: Moesgaard Museum

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Moesgaard Museum | The first immigrants

環境関連のウェブサイトを見ていたら、聞いたことのない美術館建物がグリーンで素晴らしいと絶賛されていた。ちょっと気になっていたんだけれども、しばらくの間、忘れていて、でもひょんな事から関心がさらに深まったことには理由がある。新しいお気に入りDR(デンマーク国営テレビ局)のプログラム、「デンマークの歴史(Historien om Danmark)」に、そのMoesgaard museumの学芸員がよく出て来るのだ。俄然興味が湧いて、ユトランドに次回行く時には、ちょっと覗いてみようと思っていた。

で、先日、たまたま、近くで仕事がらみのミーティングがあり、帰りがけにちょっと見学に行ってきた。オーフス中央駅からバスで30分ほど。何もないエリアに突如として現れる白壁が美しい美術館。

どうやらオーフス近郊のこのエリアは、デンマークの歴史、特に青銅器時代鉄器時代あたりに栄えていた?!エリアで、ユネスコ世界遺産になっているイエリングストーンも近くにある。ロケーションがそれほど良くない場所にありながら、見学者も多数。展示も興味深い。ただ、見せるだけではなく感じさせる展示になっている。ルイジアナデザインミュージアムもいいけれども、あまり有名ではない美術館でもいい場所がたくさんある、それがデンマーク

 

ゴリラパークに行ってきた

f:id:jensens:20170716184634j:imageデンマークには、冬の長い国らしく室内ジャングルジム施設や室内プール施設があちこちにある。体を動かしたい子供たちを抱える我々は、よくそれら室内施設に行こうと子供たちにねだられるのだけれども、せっかく夏だし屋外で類似施設がないかどうか探してみた。それで、見つけたのがフュン島スヴェンボーにあるゴリラパーク

gorillapark.dk

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今更ラトゥール

f:id:jensens:20170715224451j:image(デンマークでも紫陽花が盛り。内容とは関係なし)

デンマークで研究をするようになって困難を極めたのが、ITシステムのデザインをやっているはずなのに、その理論的背景を説明するように求められる状況に陥ったこと。それはそれで良いことだったと思う。新規性を誇るだけでなく、その社会的意味もきちんと考えることは、コンピュータが社会にあまねく広がった現在、とても重要なことで、これは、デンマークに来てなかったら持つことができてなかっただろう視点だ。

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