北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

スカンジナビアの伝統工芸

パン作りをするのに、デンマークのお母さんたちがよく利用している陶器の器がちょっと前から気になっていました。大きめのボールで、流しこむ口がついているもの。プラステックで出来たボールとは違って、どっしりしてるから、木のへらで生地を混ぜる時にも器が安定しています。

今日,スコーネ日本人会の主催で秋の催し物に参加。ヘルシンボリ郊外にあるラウス陶芸工房Raus Stenkärlsfabrik(地図)に行ってきました。おばが陶芸をやっている関係で、元々陶芸には興味があったものの、ここまで昔ながらの製法を守っている場所は見た事がありませんでした。古くから使われている窯は、人が何十人も入れる広さ。火を起こす際に使われる塩で、窯の内側表面がすっかり焼けています。これから3-4ヵ月かけて土を練り整形し、4月には火入れをして、Stengods(焼き物の種類)を焼く事になります。

それほどまでの時間をかけて造り上げていくという事にまず驚き、その伝統が消えつつあるという事にも驚きました。今回の窯入れも、6人のスウェーデン人、デンマーク人が各地から集まって来て行なうという事です。運営をしている中島さんに寄ると、スカンジナビア中でも残っているのは、ラウスと後もう一つだけ。スウェーデンには、学校がないので、学びたい人はデンマークでこの伝統陶芸を学ぶとの事。今回参加する6人のうち二人は、ローヤルコペンハーゲンの職人だとのこと。

ボールや水差し、燭台といったスカンジナビアの生活に密着した製品を作っていて、今でも(私達のように)使いたいという人はいるにもかかわらず、作る人が減っている、土がなくなってきている、などで、この伝統工芸も存続の危機にあるという事です。もり立てようとされている中島さんご一家に感服させられました。

ところで、陶器の器は、スウェーデンでは、SENAPSSKÅLEN(マスタードを作る器)と呼ばれているもので、パン作りのための器ではない事が判明。クリスマスの時期にマスタードを作る際に使われていたものだそうです。

今回は、ピアノソリストの演奏もあり、有名な画家のアトリエが同じ場所に会った事もあり、優雅な文化の日を楽しみました。