北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマークの高級車事情

私が北欧に移り住んだ10年前から比べ,現在大きく変わったことが幾つもある.そのうちの一つは,車事情だ.10年前は,明らかに車の数が少なく,街を走る車も「ここは東ドイツか?」という類の古く,煤けている車ばかりだった.これが首都を走る車か?!と驚いたので,この辺りの記憶は間違いない.また,駐在で15年ほど前にデンマークに住み,最近もデンマークに戻ってきた方も,「車が増えた!高級車がたくさん走っている.びっくりだ.」とおっしゃっていたので,その辺りの感覚も間違えないだろう.おそらく郊外はまた状況が違うとはいえ,今,コペンハーゲンの街中は高級車で溢れかえっている.一つの変化は,2007年あたりにピークを迎えた住宅バブルが契機だったとおもう.
住宅バブルの影響で,家(やアパート)を所有する人たちが一晩で金持ちになったかのような幻想に陥った.不動産の評価額が上がり,ペーパー上の資産が増えたからだ.そこで,多くのデンマーク人が向かったのが,家の転売や家を担保にした大型車の購入だ.不動産評価価格は,値崩れしたわけではないのだが,それなりに落ち着いたので,一時的な高揚に乗じて新車購入した人たちは,維持できずに手放す傾向にある.現在,中古車として売られている2005-7年のアウディA6やベンツワゴンのなんと多いことか.
ただ,デンマークの高級車事情で,興味深いのはそんなことではない.この皆が高級車を買うという流れに乗り,今までのデンマークの清貧思想(?)ヤンテの法則の縛りがなくなったようだ,という点が非常に興味深いのだ.つまり,バブルの前も後も存在していたはずの富裕層の人たちは,それまでも高級車を買えたはずである.ただ,10年前は本当に見かけなかったのだ.ガラガラの道路に,ランボルギーニが走っていたら,いくら私でも気づいていたと思う.そこで,まず,考えられる仮説としては,一般人が高級車を購入し始めたのを契機に,富裕層の車への情熱が盛り上がった.ということ.これは,考えられなくはないが,フランス大好きなデンマーク富裕層の人たちが車に関心が全くなかったとは考え難い.もう一つの理由として,それまでのヤンテの法則に縛られ,周りの人から後ろ指差されたくない,という制約が外れたのではないかということが考えられる.皆が高級車を買い始めたので,富裕層も周りに遠慮なく買えるようになった,というのが真実なのではないかなと考えている.
事実,バブルがはじけた今でも,少なくともコペンハーゲン市内では,驚くほど,高級車を見かけることが多い.たとえば,テスラ,フェラーリランボルギーニマセラティ…..きちんとデンマークの登録プレートをつけている.車両登録税が200%かかるデンマークで,これだけの車が買えるのは,おそらくそれなりの富裕層だろうが,その高級車具合がまたなんとも恐ろしくハイレベルで,富裕層同士の競争(?)が最近は加熱しているような印象を受ける.
統計などは見ていないので,悪しからず.そのうち,裏付けが取れるかどうか見てみたいと思います.