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北欧生活研究所

北欧在住11年。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

良い公共スペースを構築するための『型』

f:id:jensens:20160828052144j:image最近、日本のニュースで築地市場の移転に伴う混乱や不満について耳にした。築地の移転の話は、以前よりメディアで聞いていたし、移動先となる豊洲の土壌汚染の話なども聞いていたのだが、特にアンテナを立てていたわけではないので、その進展具合や課題がいかに解決に進められているかという話を聞くことがなかった。今回のラジオ番組で知ったのは、利害関係者の合意形成や理解が不十分なのに、もう移転の日程が確定しているということ。そして、推進派と懸念派が対立しているということだ。

 

だいぶ前から築地移転の話は話題になっていたから、きちんとプロセスを踏んでいたら、理解を関係各所から確約し、合意形成が進み、予定日に開場が不可能ではないぐらいの時間的余裕があったんじゃないだろうか。どうやら、情報が公開されず、重要な利害関係者たちが議論に参加できず、卸や魚屋などのニーズが汲み上げられずに、豊洲市場のデザインが決まり、気が付いたら開場日程が直前に迫り、取り返しのつかなくなってきている今、中止や延期の声が高まってきているという状況と理解した。

一方、最近興味を持って調査を進めているデンマークのIoT。IoT関連の事項も課題がたくさんあり、データ収集やそのデザイン、個人情報の問題だとか、社会性だとかが議論になっている。でも、色々と見ていくと、それなりに順調に一歩一歩進んでいる印象を受ける。

何が違うのかということを考えていて、前にも考えていたデンマークで公共サービスやデザインをするときに、取られる「型」が鍵なんじゃないかと思いついた。このデンマークの公共デザインにおいて踏襲される型が、IoTにおいても踏襲されていることに気がついた。これは、いわゆる書の道の「書道」、お茶のプロとしての「茶道」と同じような、「公共デザイン道」とでもいうようなものなんじゃないかと思う。つまり型があり、その型を踏襲することで、プロセスを皆が共有理解し、無駄を省きつつもアウトプットなり、経験を積んでいくことができる。ときには型から外れることもあるけれども、それはカブキということで、承認され、ときに新しいカタが生まれる。

デンマークが踏襲する「公共デザイン道」とは、次のようなプロセスを踏む。

  1. 関連委員会やコミュニティを立ち上げる。
  2. だいたいの目標プロセスやマイルストーン、デットラインを定める。
  3. 関連各所にヒヤリングをする、ユーザーにヒヤリングする。
  4. 専門的な観点から調査をし、レポートとしてまとめて、一般に公開する。
  5. 一般と議論を実施して、多様な視点を最終決定に反映させる。
  6. 最終決定を、中立的な専門家が政治家とともに下す。

今、デンマークのIoTは、そのレポートとしてまとめて、様々な社会課題の解決策のアイディアやIoT活用のアイディアを、各所から集めている4番ぐらいの段階にいるように思える。つまり、現状調査や期待、見込みなどの調査が済んだ段階だ。現在のビジネスにおけるIoTの進展具合を見てみると、それほど活用されているわけではなく、懐疑派もいるし、飛び込むプレイヤーが多いわけではない。皆が様子見をしながら、参考となるビジネスケースを探している段階のように思え、まだ盛り上がりが産業の勃興に繋がっているわけではないといったような段階だ。

豊洲市場の建設は進み、開場予定を11月に控え、進んでいるように見える新しい日本の「魚市場」。その一方で、見える形でアウトプットとしてはそれほど出ていないデンマークのIoTビジネス。一見、魚市場の方は進んでいるように見えても基礎を作ることに失敗している一方で、デンマークの社会におけるIoTは、基礎調査やデンマークにおけるIoTポテンシャルの調査は出揃っていて、進んでいないように見えても実は結構いい状況にあるんじゃないかと思うわけだ。

公共スペースという視点で考えてみると、産業界、政府ばかりでなく、市民や利用者の理解は欠かせない。だからこそ、実直にコツコツと議論を重ねて理解を深めていくプロセスを公共スペースのデザインの際にはもっと重視して欲しいと思うのだ。多くの日本人が誇り、外国人が興味を持って訪れる魅力溢れる築地が、豊洲でも実現して欲しいと思う。