北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

(社会)民主主義的グループワーク

f:id:jensens:20170222054748j:image今期も受け持つことになった「企業とのコンセプト開発」と名付けられた授業は、半分レクチャー、半分企業が出した課題解決を進めるグループワークで構成されている。
本日は、グループワークの進捗報告第一回目だった。
各グループと30分ほどのミーティング時間を持つが、全11グループあり半数でも結構骨が折れる。まだ授業は始まったばかりということもあり、際立った問題は、まだ出てきているわけではないが、霧の中を手探りで歩き回る状態の学生からは、不安の声がちらほら聞こえる。これは、昨年と変わらない光景だ。
今回のグループの中にひときわ特徴的なグループがあり、非常に面白かったことがある。グループ運営をどうしたいか、まず話し合ってもらったのだが、このグループだけだいぶ変化球で返してきた。
グループワークは、まぁ大抵4ヶ月の一学期間の間に、衝突が見られる。見られないほうが不思議なぐらいだ。フリーライダーや、遅刻常習犯、提出がいつも遅れる人もいるし、アウトプットの質や方向性がまとまらないこともある。グループワークなので、連帯責任で、この辺りはデンマークらしくない折り合いのつけ方に思えていた。
授業では、グループワークの役割(いろんな人がいろんな定義を出している)をそれぞれに自己分析してもらい、その役割をチームの中で果たすようにと言っているのだが…、このチームはこのカテゴリ分けを拒否して、自分たちは、デンマークの民主主義的方法で進めたいと言ってきた。役割分担をするのではなく、平等にタスクを割り振る。リーダーを決めずに皆がリーダーになる…。オルフェウス(NYの交響楽団で、指揮者がいない)みたいですね、と言ったら、まんざらじゃない表情だった。
デンマークの教育方法や社会の仕組みは、北欧独特なものが多々ある。ただ、大学に入ると、その独自性がなくなっていくように思う。海外のよくできた理論を造作無く取り入れ、使いこなすデンマーク人のスキルは大したものだが、理論化されてなくても、肌感覚にあっている方法というのがある気がする。理論化しないと使えないのはわかるのだが…、よりフィットする方法があるにもかかわらず、デンマークの大学で海外の理論ばかり教え込むのはもったいない気がしていた。北欧由来の参加型のデザイン手法も一見とっつきにくい、わかりにくい部分が多いからか、昨今デザインシンキングに押され気味だ。
「自分たちには、馴染んだデンマークのやり方がフィットするように思う」と言ってきた学生グループの3ヶ月後のアウトプットに乞うご期待だ。