北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマークの医療は本当に悪いのか?

f:id:jensens:20170314062732j:image待ちに待った病院でのようやくの検査(以前の記事:デンマーク医療にまたしてもやられた...ているデンマークの病院のサービスの質についてなどなど)は2016126日だった。その次の検査は、219日、そしてつい先日37日。さらに今後20日にはMRIの検査があって、春のうちに手術をしようという話になっている。

201653日にコペンハーゲン唯一の眼科グローストロップ病院で手術し、調子が悪いと病院にコンタクトを試みてから、すでに1年ほど経っている。初めに目に障害が出てきた2015年秋から昨年5月の手術に到るまで半年程、それからほぼ1年が経過しているから、約1年半、不安定な目の状態で過ごしてきたことになろうか。

私よりも、もっと大変な症状を抱えている人もたくさんいるのであろうけれども、この1年半程は今思い返しても大変だった。今でも状況は変わっておらず、毎日の生活が大変なことに変わりはないのだけれども、一度この時点で考えていたことをまとめておきたいと思う。

 デンマークの医療は本当にどうしようもないほどひどいのか?どちらかというと、虚脱感を感じる体験の方が多いけれども、最近は、簡単に良いとか悪いとか言える問題ではないということを日々考えている。毎日の生活に支障が出てくる症状を抱えている者として、早く見て欲しい、詳しく説明して欲しい、早く解決して欲しいということは、医療関係者に毎日でも訴えたいことだし、治療が進んで早くこの負担から解放されたいと思う。頭痛は相変わらずだし、肩も凝るし、背中も痛い。目は疲れて一日動きまわるのは10時間がマックスで、今でも毎日の睡眠時間は10時間をくだらない。

ただ、この数ヶ月は環境が大きく変わってきている。

12月の検査からは、すでに3ヶ月が経ち、まだ手術の予定は立っていないけれども、精神的な負担が大きく軽減されているのは、間違えない。なぜか?担当医師が、時間をとって懇切丁寧に説明してくれること、親身になってくれること、話の仕方から解決を真剣に考えていることがわかること、などの心理的な効果が大きい。さらに、時間がかかっているのは、単に惰性で遅くなっているわけではなく(多少はあるけれども)、複雑な症状であるために、様々な角度からの調査が必要で、多くの医師たちの集合知が求められるから、ということが、医師の説明により明確だからだ。

12月も2月も、そしてこの3月の診察も、どれも診察が2.5時間ほどかかった。入れ替わり立ち替わり、複数の医師が症状を見て一つづつ確認していく。長丁場の検査は、患者も疲れるが、医師も疲れるだろう。

さらにデンマークならではであるが、医療費の話はない。基本医療は無料で提供されているからだ。MRIの検査は待ち時間が長くて時間がかかると言われ、結局ほぼ4ヵ月待ちの320日に予定が組まれたが、必要である検査は、必要だからやるのであって、必ずしも費用との兼ね合いで実施されるばかりではない(そのようなケースもあるんだと思うけれど)。その代わりに、医師が必要だと思わなければ検査して欲しいと依頼しても基本実施してくれないだろう。例えば、妊娠時のスキャンなどは、回数が少なくなっている。健康体で順調に育っていれば、検査を実施して余計な負担をかけることはない。

デンマークの医療は二極化しているようだ。自然治癒力で治るのであればあえて医療を介入させない(風邪とか、妊娠とか)、介入させてもできる限りセルフサービスにする。治癒力やセルフサービスに大いに依存しているケースは多々見られ、例えば、高齢者医療分野に取られている典型的なアプローチと言える。一方で、医療の介入が不可欠な場合は、必要な措置を惜しまずに使う(一人の患者に数人が数時間かける)。私の2.5時間の診療に、人件費が世界一高いと言われるデンマークで、3-5人の医師が代わる代わる現れる場にいると、今まで私が知っていたデンマークの医療ではなくて、別の世界にいるように感じさせられる。

だが...、治療はまだまだ続く。