北欧生活研究所

北欧在住11年。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

リビングラボの肝

f:id:jensens:20170322020618j:image北欧に移り住み、はや12。はじめは、ストレスだった現地の習慣が、知らない間に自分の習慣になっていることに気づいて驚いた。自分では、日本の感覚を持ちつつ毎日の生活をしているつもりでも、改めて意識してみると、意外に「自分が変わっていること」に気づかされる。

文化は、気づかないうちに皮膚に染み込んでいく。同様に新しいマインドセットは、当初は違和感があっても、本質的な利点があれば、知らない間に根付き、意識しなくなくなる。導入が難しいと言われているIT関連事項でも同じだ。デンマークに住んでいて、当初はややこしいと思っていたNemIDや番号制度、電子政府やセルフソリューションも強制的に使わざるを得なくて、始めたものも多いけれども、今はなくては生活が成り立たない。

35年の長期的なタイムスパンで、考える参加型デザインの手法「リビングラボ」のキモは、関わる人の意識を変えることだ。つまり、一般に言われるように、単にコミュニティを社会実験の場にすることが本質なのではないし、時間を短縮するためであればマニュアル化することには、意味がない。たしかに、利害関係者を巻き込むための工夫、例えば一般人にデザインするプロセスに参加してもらうためのツールなどは充実しているから、そのためのツールとしてのマニュアルは役に立つだろう。だが、それだけではないのだ。

リビングラボのキモは、「変える」という志向性が、軸の一つになっていることだと思う。新しい考え方を意識的に取り入れていくことで、無意識的に活用できるまでに落とし込み、使っている人たちが知らず知らずのうちに社会変容をもたらしていくアプローチだ。無意識の慣れ段階にまで到達しないと社会変革は起きないんじゃないかと思う。

クラッチの踏み方を考えながら運転する運転初心者から、運転していていることを意識することなく、ギアシフトを意識しなくなるステージに移る感覚だろうか。運転に注力しなくて良いぐらいの「慣れ」が得られて初めて、景色を楽しみ、旅先の交流を楽しむステージに移って行けるのだろうと思う。

そんな場を作るには、デザイナは必要だと思っている。意識変革を促すデザイナだ。それが、リビングラボのデザインと考え、社会課題の解決を目指して、長期的な視点で、リビングラボに取り組んでいる。

時間はかかるけれど、急がば回れの心持ちで、未来に残るものを創り出すリビングラボのプロジェクト。同じようなモチベーションで、一緒にプロジェクトを進めたいという人が増えきている。嬉しいことだ。