北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

口頭試問とデンマーク的評価

f:id:jensens:20170630052243j:imageまたしても口頭試問の時期が来た(デンマークでの口頭試問の受け方口頭試問、再び)。今期は、ほぼ1週間缶詰で、2人で合計70名ほどの学生を評価する。

今回、直前になってセンサー(外部の試験官)のキャンセルが発生したために、なんと4人のセンサーが日替わりで同席することになった。同僚が別のセンサーと半数の学生を評価するので、70名の学生に対し、合計センサー5人と授業担当者2人での大掛かりな最終試験である。日替わりのセンサーだから、毎日、どんな授業をしてきたのか、どのような学習達成目標があるのか、それぞれにスクラッチからブリーフィングをしなくてはいけないのは辛い..。初めての人と話すのは苦手ではないと思うけれども、学生の半年がかかっているこの短い1日に相手を理解して対応を調整しつつ、試験を一緒に実施するのは辛い。とはいえ、同じ分野の研究者と知り合うチャンスでもあり、彼らがどんな考え方をしているのかを見ることができるということもあり、うまくこの機会を活用したいところだ(無理やり前向き)。

今回は、4人のセンサーに大きな衝撃と刺激を受けた。1日目のセンサーは昔の同僚ヨアキムで、今回の4人の中ではどちらかと言えば厳しめだった。でも、センサーとしての立ち位置を心得て、上段に構えて、質問を繰り広げる、とても的の得た質問をするセンサーだ。学生の受け答えを引き出すために質問のクオリティを調整し、優しい質問から挑発するような質問まで多種多様な質問を投げかける。この一発勝負の試験の場で、よく学生を挑発できるなぁ、と改めて感心する。2日目のセンサーは、バリバリ工学系からデザインに転向した研究者ラザで、言うことが的を得ていて且つ厳しい。とは言いつつも、去年のセンサーとは大きく異なるスタンスで、授業担当者(私)の意見を尊重してくれる。3日目、4日目は、あろうことか...初めのてのタイプ。めちゃくちゃポジティブ思考のセンサーで調子が狂わされた。

デンマークの口頭試問を理解してもらうために簡単に試験の流れを説明すると、フレームとしては下記のような流れになる。

  1. 学生が入場・お互いに挨拶、試験官から本日のスケジュールを説明する
  2. 学生が5-10分プレゼンする
  3. センサーを交えて3人で、プレゼン内容やレポート内容についてディスカッションをする
  4. 学生は一時退出、センサーとパフォーマンスについてディスカッションし、評価をその場で決める。
  5. 学生再度入場、評価を理由とともに発表する

口頭試問を進めるための私が持っていたゴールデンルールがある。中でも一番重要なのは、センサーの判断に最終的には委ねること、だ。授業担当として、学生のパフォーマンスに対して言うべきことや自分なりの評価は主張するべきだが、授業担当者がいかに評価したとしても、センサーから見て不可であれば不可なのだ。学生を除いた、センサーとサシでの議論の時間は5分ほど。センサーが全く異なる評価をしたり、議論が紛糾しても、5分で終わらせないといけない。だからこそ、私は、口頭試問のディスカッションの際には、学生が得意そうな内容についてまず質問するし、より深い内容理解ができているかどうかの確認はするものの、あえて意地悪な質問はしないことにしている。意地悪な質問は大抵センサーがするからだ。センサーとのサシの議論においては、私が評価Bと考える場合は、評価Aから始める。つまり、私のスタンスとしては、まずは何はともあれ学生をポジティブに評価する。どうせセンサーが評価を1-2段階下げるからというのが前提に成っているのだけれども。

ところが、3日目4日目のセンサーは、意地悪な質問は全くせず、どうしたものかと思っている間に議論の時間は終了してしまうし、点数をつける段階でも私の評価に概ね賛同してくれてしまったので、批判的な議論に全くならなかった。ここで私は、戦略変更し、学生の批判もするべきだったのだろうか?それでは、1日目、2日目の学生に申し訳ないと考えているうちに、機を逸してしまった。

定量評価でわかることと定性評価でわかることは異なり、どちらのテスト形式も良い点と悪い点がある。主観はなるべく入れないようにするべきだし、評価基準も統一するべきであると思うものの....、どんなセンサーに当たるかは運、そして運も実力のうち...。