北欧生活研究所

北欧在住13年。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマークに住みたい人へ

f:id:jensens:20170713042909j:image(デンマークに住めばもれなくこんな景色が付いてきます)

なぜか、すでに7年前に書いた『デンマークに住む方法』というエントリーが、延々と閲覧ランキングトップを維持し、閲覧数を更新している。それだけ、デンマークに住みたいと思っている人が多いんだろうか。自分で言うのもなんだけれども、今見ると内容は、あまり実用的でもなければ、役に立つとは思えないんだけれども。

 デンマークに住んで13年目に入る私は、デンマークに住む新鮮味を毎日の生活で感じることはほぼなくなり、毎日の生活を淡々とこなしているのが正直なところだ。日本でもデンマークでもあまり変わらず、日本で仕事する時も「あぁ、日本だな」とかあまり思わないし、逆もまた然りで、普通に毎日の生活を送っている。正直、無意識に「なんでこんな刺激の少ないデンマークなんぞに住みたいんだろう」と思っているんだろう。デンマークに住めて幸せですかなど聞かれたり、デンマークに骨を埋める覚悟なんですねとか言われるたびに、回答に困る自分がいる。時にはブレークダウンもあり、デンマークのやり方を受容・認知したり、日本よりうまく動いている事項を発見しては、デンマークはいい国だなぁと改めて感じたり(もちろん逆も多々ある)して「デンマークに住む自分」を認識したりする。

デンマークに慣れてきたー染まってきた、と改めて自覚するのは、たまに日本からの訪問者と話したり、短期滞在者と話したりする時だろうか。日本人が驚きを共有してくれたり、短期滞在者の何気ない一言が、「あぁ、私もそんなことを思っていたこともあった」と、昔の気持ちを想起させてくれる。そんなこんなで、折に触れ思い出すのが、デンマークに来て初めて知った「民主主義」だ。英語の授業で丸暗記させられたJ.F.Kennedyの大統領就任演説を私はずっと理解できずにいたのだけれども、デンマークで生活して初めて腹落ちした。

My fellow Americans, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.

一人一人が、社会と国を支える一人として、自分ごととして、政治を考えること、自分が社会のために国のために、何をすべきで何が貢献できるかということを考えるという、民主主義の基礎を当時の私は何一つ理解できていなかった。「え?公務員や政治家が国の方針を決めて動かす、それが彼らの仕事なのに、自分の仕事を国民にやらせようとするってそれ違わない?」と思っていた。なんでこれが歴史に残るような素晴らしい演説で、市民が沸いているのかわからなかった。恥ずかしながら、これを理解できるようになったことがデンマークに来て最も良かったことの一つだ。

デンマークは、全ての人が社会のために貢献することを前提とし高福祉を実現している。貢献とは多くの場合、税金を納めることを筆頭に、国の政治に物言ったり、地方自治に参加したり、地域のコミュニティを支えたりすることなど多種多様。もちろん、種々事情で貢献できない人もいるだろうけれども、そんな人たちを排除するのではなくて社会的弱者として社会全体で支え合おう、と言う合意がデンマークをはじめとした北欧諸国にあり、それで初めて高福祉高負担の社会が成立する。

近年の移民難民問題で悩ましいのは、両輪の片方つまり社会のために貢献するという高負担なく、高福祉のみが求められる状況があり、車輪が回らなくなっていることから起因することが多いように思う。それは、残念なことにいわゆる槍玉にあげられがちな東欧や中東移民や難民だけの問題ではない。

デンマークに住みたいと言っている人たちに言いたい。

あなた方が感じるデンマークの魅力は、教育、医療が無料で受けられることの高福祉のみを見て言っているのではないか。果たして高負担の責任と義務も負う心構えがあるのか。短期間の滞在であっても、滞在許可を受給して滞在している人たちは、デンマークにおいては教育も医療も無論、無料で受けられる(ま、非EU市民は大学などの授業料は取られるようになっているなど変わってきていることも多々ある)。ただ、それは、あなたが気がつかない多くの人の見えない「負担」によって成り立っているものであり、絶対的な「無料」は、存在しない。「せっかくデンマークにいるのだから無料の医療を体験しておきたい」、「病院にかかっておけば良かった。」そんなことを無邪気に言える(日本)人は能天気としか言いようがない。