北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

都市のたたみ方

f:id:jensens:20171203181225j:imageしばらく一緒に研究や仕事の手伝いをしていてくれたYくんが、日本に帰国することになった。ご挨拶に来てくれたのでちょっとおしゃべりをしていたのだけれども、いつも刺激を受ける。

今後師事することになる首都大学東京の先生の話やら、都市計画をいかに進めていくか。デンマークエコビレッジが参考になるんじゃないか、と言う話は面白かった。

 

日本のエコビレッジは、環境に関心がある人が一緒にエコな生活を送る場になっている気がしていて、デンマークのそれとはちょっと様相が異なる。デンマークのはもっと、生活や人生の価値観を共にする人たちが共同生活を送るコミュニティと言った方がしっくりくる。エコビレッジを一つのEntity(と言っていたけれども『生き方』とかが近いんかな)として考えて、その生き方をじっくり深めて行って、今後の『人が住む場所』を考えるということみたいだ。これがエコビレッジを都市計画やまちづくりの視点から見ていくということだと理解した。

近年、日本の地方活性化は、フォルケホイスコーレから視点を得た教育改革の視点が見られるんだそうで、地に足のついた、独立独歩の姿勢は確かに親和性が高いように思える。そして、今必要なのは、制度設計の地盤。いかに法律や規制、補助金を活用して良い生活環境作りを支援するか。国ができることはたくさんある。

紹介された 『都市をたたむ』という饗庭伸先生の著書の中で特に、「第2章:都市を動かす人口の波」が面白かった。この章は彼の関心事の中心ではなのだろうし、あまり私の感想にピンときてもらえなかったけれど、人口が減っていくということを、今までとは違った視点で示していたところが興味深い。人口が減るから困ったという論ではなく、ベビーブーマーが極端に人口増をもたらしているのであって今までがちょっと例外的なんだよね、という話。そしてもっと広い目で見て「自分の都市がどのような人口に使われてきたのか、自分の都市の人口がどのように推移するかを理解し、自分の都市の人口と新しい都市の人口がどういう目標を持って都市を使うかを想像することが、都市計画の適切な実践のために必要である(p.88)」のだ。

なんだか読書感想文になってしまったが、備忘録としていくつか気になった箇所を抜粋。

ある世代から上の専門家たちにとって、計画されて作られた新しいものと、古き良きものとの対立は、まだはっきりしていた。近代的な理論に基づいて計画されたものは、機能的ではあるが美しくない。古くからある人間の手仕事に基づくものは、無駄はあるが美しい。彼らはこうしたわかりやすい対立軸を持ちやすかった。...しかし筆者は子供の頃に近くにあった団地の階段室を懐かしく思い出すし...p.20

都市はすっかり貨幣を媒介とする経済市場に組み込まれてしまったように見えるが、その足元では、次々と新しく媒介するものが生まれ、それらに媒介された経済市場が生み出されている。楽観的な言い方になるが、私たちはそもそお、何らかのものを媒介させて再配分と交換の仕組みを作り出していく「力」を生得的に持っているのである。ここで、年が貨幣を媒介とする経済市場に組み込まれているという無意識の経済市場を組み込んでいくという、可能性があることを認識する必要がある。p.41

もはや中心やゾーンといった考え方で3つの産業と住宅を縛らなくてもあまり問題が起きないので、その縛りを外し、土地が持つ3つの産業と住宅の可能性を幅広く、全体の中で考えていこう、と発想を転換するのが全体✖️レイヤーモデルである。p.163

本書に通底しているのは、第1章で述べたように、「都市のために都市を縮小するのではなく、私たちの持つ小さな目的のために、主体的に都市を使いながら縮小する」ということである...p.242 

 どのように都市を使っていくか、共存していくかきちんと考えなくっちゃと思ったのである。

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