北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

銀行の行く末

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デンマークでは、金融分野での電子革命がものすごい勢いで進んでいる。小回りの効く小国であることは勿論なんだが、気がつけば、現金は持たなくなり、カード社会であると同時に、少額決裁の仕組みも安定している。デンマークメガバンクDanskebankの店舗はどんどん閉鎖されているし、そもそも現地に住んでいて店舗に行くことはほとんどない。14年住んでいて2回ぐらい?

自分が使っているのがDanskebankなので、全部の銀行がそんな傾向にあるのかと思っていたら、ひょんなことから、デンマークの銀行は大きく2極化していることを知った。

 Danskebankとは異なる戦略を推し進める中規模銀行Arbejderens Landsbank(AL)の方が、ある日授業に参加することになった。生徒との共同研究のパートナー企業として大学にきてくれたんだが、そこから担当者と気が合って話すようになり、詳しい話を折に触れ聴くことができている。話を聞けば聴くほど、銀行の本来の姿とか役割を真摯に遂行しようとする姿に目から鱗のことばかり。

ALは、顧客との対話に時間をかける(他銀行がかける5倍の時間を一顧客にかけるそうだ)、必要とされているから店舗は閉鎖しない。その他、直接の収益に繋がるわけではないけれども、イノベーションラボを設立したり、学校を回って金融教育を提供したり。子供をはじめとしたあらゆる年齢層の顧客を大切にするのは、長期的な関係性を築きたいからである。健全な家計を維持する手伝いをすることで、将来的に住宅や車に大型投資してくれる可能性を高めようとしている。小賢しく軽く顧客を騙しつつ短期的利益を上げようとする金融ではなくて、長期的な視点を持ち顧客と一緒に育っていこうとする。ともすれば古い考え方なのかもしれないけれども、そんな志を維持しつつ業績を上げている銀行が、きちんとサバイバルし続け、そしてそんな銀行がいることを知ることができて単純に嬉しい。

勿論、ALにも色々戦略があるので、ナイーブに優しい金融をしているわけではないけれども、その話はまた別の機会に。