北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマーク医療を評価する理由

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北欧の医療は素晴らしいと言う手放しで褒める記事や論文は多々あるし、逆に北欧に住み始めた日本人の不満の声も多くのブログや口伝えで聞く。13年住んだ今、デンマーク医療の背景となる病気や治療に対する哲学を知り、公的医療として無料で国民に提供されるがゆえの医療の質と量のジレンマもよく理解できるようになった。一個人としては、もっと充実させる方法があるとわかるがゆえに悩ましい部分もあるものの、数回の眼科手術をデンマークで受けた身としては、以前デンマークの医療は本当に悪いのか? - 北欧生活研究所で書いたように社会全体としては、とても良い仕組みになっていると言わざるを得ない。そして、以前言及したように、治療の質は二極化しているのでどちらの治療を受けたかによって個人の感想は大きく異ならざるを得ないと言う点も改めて協調しておきたいと思う。

 二極化していると言うのは、簡単な手術、例えば白内障の手術などは、残念ながらかなり流れ作業での対応だ(私もやった)。医師と話す時間もほとんどなく、術前の説明も紙切れが渡されるだけ、術後の説明もほとんどない(私の場合はなかった)。非常にだが一転して、非常に難しい手術で先端医療や知見がフル活用されねばならない治療においては、専門医がなんと2-3人付き、入れ替わり立ち替わり目の状況をチェックし、意見を交わして行くのだ。しかも患者の眼の前で。患者としては、初めは不安なことは多々あった。いや、自分眼の前でうまくいったとか、難しいとか、こっちの手術の方がいいだろうとか、しまいには、どちらの方法がいいですか?とか言われても、専門知識がない身としては、対応に困る。ただ、何度か同じ状況におかれると、少しずつ自分の眼の何が難しい状況なのかわかってきて、自分がどうしたいかと言うこともわかってくる。不思議なことに、議論して聞いてくれることが逆に安心になってくる。この形の診察は5分どころか、1-2時間かけてじっくり実施される。

私の担当医は、非常に落ち着いた信頼のおけそうな医師ヨーンで、片腕のトビアスはどうやら軍隊の医師もやっている(エリート)。もう一人の若い医師は、どう見ても二人を尊敬していて、そんな素敵な人間関係が見える職場は、診察のためとはいえ、行くたびにほっこりする。

と言うわけで、今回ようやく眼科の手術が実施された。前回、5回目の眼科手術とあちらこちらに伝達し準備万端の手術予定(第5回目ぐらいの眼科手術 - 北欧生活研究所)が、緊急手術が入ったとい言う2時間前の連絡で(絶食してたのに…)手術が延期になって早2ヶ月、ようやく先週手術を受けることができたのだ(そうです、前回は流れました…)。実は、4月はデンマークでは春闘の時期。労働者が雇用者に賃上げ要求をガチでするデンマークでは、公務員(医療もほぼ全て含む)の合意(つまり公務員と政府間の交渉)がなかなか取れず、のストが予定されていた。予定は2ヶ月前から決まっていたもののかなりの確率で再度手術延期になりそうで、周囲にはほぼ伝達してなかったのだが、結局予定通り実施された。実施されたのはよかったのだが、かなり準備不足で、連絡できない人たちも多く迷惑をかけました。迷惑かけた方々ごめんなさい、そして暖かいコメントをありがとうございます。