北欧生活研究所

北欧在住13年。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマーク金融リッチと知り合いになった、そして。

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ブロンド碧眼のすらっと背の高い紳士。奥さんも金髪碧眼で、品の良い洋服を身にまとい軽く香水の香りをまとっている。子供も金髪碧眼でサラサラの髪を風になびかせる。週末は家族でスイスの山々やイタリアにいき、乗馬やポロを嗜み、週末やクリスマスなどの年間のイベント時には夫婦揃ってガラパーティに行く。世界各地で実施されるカンファレンスには、顔を出し旧友を深める。親戚は、欧州各地に住んでいて皆どこかでCEOをやっていたり、政府と関わっていたり。いつもどこにいるのかわからないぐらい夫婦共々各国を飛び回っている。そんな小さい頃本で読んだ物語的生活を送る欧州の金持ちと知り合いになった。

 本当の欧州のお金持ちを私はよく知らないけれども、物腰柔らかで揺るがない自信が全身からみなぎるこの紳士と家族は、本当のお金持なんじゃないかと思ったわけだ。知り合ったのは5年前だけれども、事態が進展したのは、2017年。急激にこの違う世界に住む人たちに接近することになった。

たまたま同席した会合で、ちょっと日本関連の開発プロジェクトをサポートしてくれない?!と言われた時、断る理由もなかったし、興味あります。と確かに言った。お家に招待されてお茶をご馳走になり、今取り組んでいるというプロジェクトの話を聞いた。正直、プロジェクトの内容は奇想天外すぎてよくわからなかったのだけれども、そのプロジェクトに熱意を持って取り組んでいること、そして、訪問の趣旨とはかなり異なるけれども、かなり裕福な家族ということも、家の調度品などから見て取れた。

1週間後に会って頼まれた通訳タスクをちょっと手伝って、その後、外部と連携した基幹技術の開発を行う「ラボマネージャ」ジョブオファーをもらった時も、自分のコンピュータやデザイン分野での研究の知識が必要とされてるなら手伝ってもいいかな、自分のスキルを認めてくれたのかなと嬉しかったことは確かだ。結局、今携わっているプロジェクトがあるので週1ぐらいだったらやりますよと返事をし、9月に始まった彼のスタートアップに、12月のクリスマス前の寒くて暗い冬のある日一応正式に関わることになった。

デンマーク人としてはかなり特異なカテゴリに入るぐらい仕事人間のその紳士は、金融業界に長い間かかわっている人で、本人曰くそれなりに成功を収めたらしい。その後、所属していた投資銀行を出てファンドマネージャとなり、世界を股にファンドを展開したという。現在、取引はスイス、ポルトガル、スペイン、そのほか数えきれない。私でも知っている有名各所の金融機会の名前も言葉の端々に登場し、今のプロジェクトのポテンシャルを、毎日見せつけられている気がした。

プロジェクトのコンセプトは、今でもとても好きだ。今後必要になってくるだろう金融のグローバル・マーケットプレイスのコンセプトはとても魅力的だったし、今後の世代にフィットしているコンセプトであるとも思えた。機能も今は絵に描いた餅であったとしても、実際に動くものになっていくのであれば、研究としても社会実験としても、そして実用面でも面白いだろう。何よりも、デンマーク紳士の今までのネットワークがあれば、多くのファンドマネージャがこぞって使いたいと思うものになるんだろうなと、語りを聞いていると魅了されずにいられない。

その後、初期に提示されたラボマネージャの仕事は一向に進まず、締結間近という日本の投資家との会合に引っ張り出されるようになった。開発のはずがセールスさせられている自分の姿に自分でも納得いかなかったけれども、とりあえず投資がうまくいかないとラボの話も立ち消えかなと思っていたから、それなりに真剣に取り組んだ。その後、日本からの投資の合意も間近ということで、すぐさまボスと日本に短期出張をした。だが、実際に投資家に会ってみたら、投資を考えているとはいうもののまだ判断が下せる状況ではないとのこと。その頃の私はスタートアップに関しても常識程度のことしか知らず、投資がどのように行われるのかも、金融分野に関しても正直全く理解していなかった。そんな私が投資セールスできるわけないのに。その頃の会社の状況は、今わかっている言葉で言えば、プレプレシードぐらいだろうか。スタートアップとはいえ、実際見せられるもので手元にあるのは、コンセプトとαデモのみ。しかもデモやコンセプトは妥当性の評価もされていない。

そのうち、締結されてないコラボが、さも締結されているかのように話されたり、一回メールを打っただけの相手がお友達としてネームドロップされたり、投資家がじゃんじゃん寄り集まっているような印象を与えるピッチ内容が気になり始めた。いや、嘘ではないのだが、ちょっと誇張しすぎじゃないというところが多々あって、自信満々に話ているボスの横に座っていて小心者の私はむず痒くなってき始めた。そして、日本での(未)進展具合を尾鰭をつけて欧州の投資家に話すのをみているうちに、普段から聞いていた素晴らしい交友関係やビジネスの業績がもしかしたら全部、かなり盛っているんではないかと思うようになってきた。

正直、始めの印象は、欧州紳士だった。ちょっと行動が不可思議な人だけれども、いつもエネルギッシュで、チャーミングで、いつも相手を気にかける言葉を口にする。外に出るといわゆる欧州的エスコートをする(これは通常デンマーク人ではあり得ない)。ただ、今思うと、少なくとも私に取ってはサイコパスだ。なぜ、サイコパスかと思っているか?それは、かの紳士の社会的行為が、自分の社会性のなさを認識し学習の結果身につけた「やらなくてはならないと知っているからやる」配慮の態度だったという片鱗を折に触れ見たからだ。意識的にやっているから、全ての人がサイコパスというわけではないし、意識してやってはダメという訳ではないだろう。そんな人たくさんいる。

ある日、ボスがイライラしながらあるメールがいかに非常識であるか同意を求めてきた。「こいつは、たった2ヶ月、支払いが遅れたぐらいでグタグタいう!自分たちはスタートアップで投資がいつくるかわからないのに。スタートアップのことを何もわかってない。自分は給与なしでもう1年もこの事業を進めているんだ」たかが、1万クローネ(20万円ぐらい)でなんでこんな大騒ぎをするんだ?と同意を求めてきたその人に私は唖然として声が出なかった。いや、普通にデンマークに住んでる人はそれが数ヶ月滞ったら生活が破綻すると思う。。。

はっきり言って、私は、スタートアップで投資家がきちんといない状態で提示される日給の域を超えているんじゃないだろうかという額を提示されていた。だからこそ、フルコミットするのが躊躇されたし、実際に次々に去っていく人たちがなぜ怒りとともに突然消えるのかもすぐに納得がいった。そして、今残っているのは学生デザイナと学生プログラマのみ。業界的に盛るものであるのかもしれないし、起業家として喋りが上手なのは投資家を募るのに重要だろう。本人は真剣にやっているように思えたから、ちょっと付き合ってみようとしばらくは思っていた。ただ、スタートアップ事情を色々と自分で調べていくうちに納得がいかない部分が増えてきたこともあり、また、ボスの依頼が度を越すようになって、私の関与の終わりが近づいてきたことがわかった。

NetflixドキュメンタリFYERで、口々に「嘘つき野郎」と罵られていたFyer Festivalの起草者の起業家は、私は嘘つきではないと思う。本人はそれが嘘だとは思ってないから。もしかしたら、自分は賢いと思っているかもしれないけれども、自分が悪いことをしているとは思ってないんじゃないだろうか。いつか一花咲かせてやろうと。世の中の成功起業家として名前が上がるであろうスティーブ・ジョブスイーロン・マスクの逸話を聞いていると、FYERの主人公と欧州紳士との類似点が多くあるように思える。GeniusかMad Manか、そして成功者と単なるサイコパスの違いは何だろう?誰か教えてください。