北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマーク式教育

最近,気がつくと考えてしまっているテーマ,教育.デンマークの教育もいいところがあるに違いないとようやく納得しかけていた矢先に,カウンターパンチのように食らったデンマーク国営テレビ局のシリーズ9. z. mod Kinaは,とてつもなく衝撃的だった.

簡単に解説すると,デンマークと中国の9年生(15歳前後)に,同じテストを実施してその出来を見るというドキュメンタリー.4回シリーズで,国語,数学,創造性を調査する.デンマークで実施されているテストを中国語に訳し,中国で実施されているテストをデンマーク語に訳し,両国のクラスで実施させた.結果は,驚くことに創造性を含め,デンマークの惨敗.中国の教育格差は大きいだろうし,デンマークにも成績の良い学生はいるので,具体的な勝敗の決め方に関しては,議論の余地があるかとおもう.ただ,描かれるデンマーク側の集中できない学生をみていると,何か間違っていると思わざるをえないのだ.

授業中にゲームをダウンロードしたり,自分たちは実験が終わったからと教室の隅でボール遊びを始めたり,音楽を聴きながら授業を受けるのは,「自由」をはき違えているとしか思えない.5分後に戻ってきてね,と教師に言われて,30分近く遅れてきた学生は,謝りもしない.

デンマークの教育方法は,60−70年代に大きく現在の方向性へと変化の舵を切った.その頃の若い教師だった義理の母は,初めて学生にファーストネームで自分たち教師を呼ばせるなどの変革をもたらした功労者で,今でもその事実を誇っている.とはいえ,まだ70-80年には,教育界の重鎮は,古い教育形態を維持してきた人たち.教育界の変革は,さらに20−30年たち世代交代がおこった今,現実化している.その頃の若い教師たちが夢見た理想の学校ー教師と学生の平等な社会,学ぶ自由,創造性教育ーは,彼女らがトップにたった現在ようやく実現しているが,これが本当に理想の教育なんだろうか.

デンマークではまだまだマイノリティだと断った上で,週末を一緒に過ごしたブライアンとルイーズのデンマーク人夫婦は,デンマークの教育への懸念をあらわにした.現在,5歳と3歳の娘の親である二人は,真剣に海外移住を考えるという.良い教育を子供に施したいから.