北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマーク式教育再考

以前,デンマーク式教育で,デンマークの教育方法についての懸念を述べたことがあるのだけれど,ここにきて,デンマーク式教育,根本的には悪くない方向性なんじゃないか,と思い始めている.180°の偏向で,自分でも説得力ないなぁと思ったりもするのだけれど,きちんとした理由がある.

子どもによい教育を施したいと考えるとき,何のための教育なのかをまず問う必要がある.従来型のゴールが明確で,やるべきことがわかっている場合は(より良い自動車を作る),つまり,系統立てた知識を構築し,リーダーの指示に従うことが求められている場合は,従来の日本式・米国式教育が望ましいのだろう.しかし,今必要な能力が,現在の自動車をより良くする能力というより,新しい移動手段を構築することと定義できる創造性であると仮定すると,現在求められる教育は,創造性を刺激する能力,新しい枠組みを構築することの出来る能力であると考えられる.つまり,不確実性が高く,複雑性が高まっている現代社会では,求められる能力が変わってくるはずだ.このように,今求められる能力って何だろう?と考えてみたとき,デンマーク式教育(がうまく機能したとき)の特徴がまさしく,今後社会で求められる能力を育てるための教育なのではないか,と考えるに至ったのだ.

未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすものを読んでいて,イノベータを育てるために不可欠であるとしている特徴がA-Zで,まさにデンマーク式教育であるとふと気付いて唖然とした.複雑性が高まっている現代社会では,一人で出来ることには限界がある.だからこそ,同じ目的に向かって,コラボレーションできる仲間を探し,協調していくコラボレーション能力.従来の常識といった気付かずに捕われていて思考を硬直させている「枠組み」を外す能力.あたえられた課題ではなく,自分から問題の根本を探す課題設定能力,などだ.うまく行っているかどうかは,別問題で,やはり良い学校と避けたい学校は別れると思うが,これらは,デンマークの学校のカリキュラムで提供しようとしている教育なのだ.