北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマークの個人主義と自由へのこだわり

2015年12月3日、デンマークにおいてEU司法・内務協力の留保撤廃に関わる国民投票が実施された。結果、投票率72%(6月の総選挙は84%だったから、投票率低い?)で、賛成46.9%、反対53.1%だった。

否決されたことが何の意味を持つんだろうと、欧州に住んでいてもよく理解していない人は多いと思う。私もそこまで理解しているわけではないけれども...、この背景は、こちらに詳しく記述されている。つまり、デンマークは、EUの一員として統一経済圏の恩恵を受けつつも、4つの留保事項を持っていて、その4項目に関しては国の主権を手放していない。そのうちの一つが金融政策(ユーロに加盟してない)であり、もうひとつがEU司法・内務協力だ。その項目について、EUと足並みを揃えていこうという提案に国民がNOを突きつけた。

デンマークは、憲法に「国家主権の一部を(EUに)移譲する場合は、国会の5/6を超える賛成で可決、もしくは、過半数で可決した後、国民投票で承認を得る必要がある」とされている。この規定に基づき、今回、懸案の留保事項の一つEU司法・内務協力が国民投票の俎上にあがった。

背景には、国境を超えた犯罪の増加や近年活発化するテロ対策があるのだろうけれども、結局、国際犯罪対策よりも、デンマークは自国の民主主義にこだわりがありすぎて、自国で自由を守ることを選んだ。ただ、今、テレビなどで議論になっているように、デンマークが別枠でEUと司法協力を締結するとなると、ネゴなどで一つ一つのプロセスに益々時間がかかる。それに、早期対処が必要な時にどうするんだ?

今までデンマークは長期的議論を通して、国民の合意のもと多くの仕組みを構築してきた。そのデンマーク的やり方を継続したい気持ちはわかる。主権は確かに必要なものだ。でも、EUと足並みを揃えずに、我が道を行く...のだったらEUの意味って何?選挙で選ばれた代表の意味ってなんだろうか?

投票の2週間ほど前から、街中では、「NO」のサインばかり見られるようになり、数日前には調査でも、NOが過半数を占めるようになっていた。結果は、予想どおりだった。