北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デザインドリブンから揺れ戻し

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最近周囲のイノベーション関連組織(大学のインキュベーションやイノベーション推進組織)では、再度、理工系(STEM)分野への注目が集まっている印象を受ける。個人的な主観ではあるんだけれども、今まで私の周辺で見られていた「デザインシンキング」「今ある技術をいかに新しい組み合わせで提供するか」という、「デザインが全て(ま、技術は既存技術の組み合わせで行け!)」というアプローチから(いわゆるデザインコンサルってこんなアプローチ?)、古典回帰というか、「デザイン思考的なアプローチは重要だけれども、使い勝手なんかだけではなくて、ラディカルイノベーションによる新たな技術を作り出してなんぼ」。それが、国力に貢献する大きなイノベーションを創り出す源泉だ、という観点に変わりつつあるようなのだ。

デンマーク工科大学(DTU)は、STEMにフォーカスしたプログラムを地道に継続し、技術立国としての土台作りと底上げを狙ってるのは、以前にも何度か述べた(新産業を興すための仕組み)けれども、我がITUでも、社会学系の研究者は肩身が狭くなっている(実際、私はそうは思わないんだけれども。デザインは周辺で技術を支える重要な役割を持っているから。だから脇を固めるぐらいがちょうどいい。)というぐらい、大学の目標が新IT技術の創造に傾いている。スウェーデンのカロリンスカなどはライフサイエンスのエコシステムを強固なものに作り上げているし、米国や英国然りだ。

最近発表された米国の The demographics of innovation in the United States (feb, 2016)というITIFによる報告書も、STEMがイノベーションをもたらすこと、いかにイノベーションを促進するための手段を米国が維持できるか、という点が分析されていた。 直訳ではないけれども、面白いと思ったのは、おそらく執筆者の意見と一緒(流されてる?)、「学部中退者がイノベーションを成し遂げるという印象を昨今持つ人は多いだろうが、実際のデータを分析してみると、(STEM系イノベーターの)年齢の中央値は47歳で、仕事経験とSTEM分野における深い知見を保持している。イノベータは、高学歴であり、科学、技術分野におけるphdなどの高学位を取得している。」という点。

In high tech fields that require deep expertise, the average innovator in life science, materials science, and information technology is much older than the median age of the American work force.

ロケットサイエンスではダメで、地道にSTEM分野の研究者や実践者を育てることが不可欠なのだ、というメッセージなんではないかと思う。

 

ところで、日本は最近デザイン思考の話は良く聞くようになったけれど、「技術立国日本」の掛け声を聞かなくなってきたような気がする。一周遅れなのかな…。