北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

ガーダーホイフォート:戦争ごっこ

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少し前の週末に近くの要塞でイベントがあるということで、子供を連れて出かけた。Garderhøjfortと呼ばれるこの要塞は、コペンハーゲン最大の要塞で、Jægersborg駅からほど近い場所にある 。地下要塞が作られていて、作られたけれども使われなかったダブルキャノンが設置されている。この日のイベントは、要塞見学や大砲の発射、野戦食(?)が食べられるというものだった。行ってみて、いやぁ、驚かされた。

要塞の周辺には、1943年(後で知った)の軍服の軍曹や女性兵や看護師が歩き回っていた。第三帝国の腕章をつけ、デンマーク国旗を腕に縫い付けたドイツ軍服の男はタンデムを運転し、ものすごい音を出しながら、要塞を監視している。たくましい白髭を蓄えた軍曹風の男性も若い兵士と談笑しながら要塞に入っていくし、古風なナース帽に、長いスカートを履き、木製の救急箱を抱える女性看護師が要塞と外を忙しそうに行き来している。赤いルージュをつけ、膝丈のスカートを履き、さっそうと歩き回る女性兵(当時の服装だから今から見るとちょっとやぼったいんだけれども、それがまたかっこいい)、外の炊き出しでスープを混ぜる一等兵(?)。一瞬、自分がどこにいるのかと、タイムトラベルでもしたような感覚に陥った。まるで、テレビのセットもしくは過去の一ページに自分が入り込んだかのようだ。

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ホームページによると、この要塞は、市民による保存運動にも関わらず、コペンハーゲンをはじめとした地方自治体の支援を受けることができず、市民がネットワークを作り資金を捻出、2013年9月に公開が始まったものだそうだ。初公開時には、デンマーク科学技術館(Experimentarium)が支援し、その名残で内部の展示物には、英語とデンマーク語の両方で解説がつけられている。

もちろん、保存状態が良く、内部の地面を掘って作られた秘密基地的な雰囲気も圧倒されるものの、何よりもこの「場」自体、その雰囲気に圧倒された。具体的に何に圧倒されたかを考えていくと、"1943-45当時の軍人になりきって要塞のそこらかしこで歩き回る人たちの真剣さ"にたどり着く。ヴァイキングオタクたちと同じように、当時の食器、当時の洋服など(おそらく自作)をを着込んで、司令室で大きなマップを前になにやら話し合っていたり、当時のタンデムバイクに乗り込んでエリアを疾走したり...。その当時の生活を再現しているのだ。この人たち、以前、デンマークのオタクたちで、見た軍隊マニアと同じグループと思われる。彼らの本名は、Danforce Bataljonen。多分にもれずフェイスブックページもある(Danforce Bataljonen)。

jensens.hatenablog.com

戦争オタクと言っても特に危険思想などとは関係なさそうで、単純に当時にロマンを感じ、週末に当時の生活に耽って楽しんでいる朗らかな人たち(にみえる)。

彼らを見ながら、第二次世界大戦の傷跡が深く残る国で、このような演技がどこまで楽しみとなり、社会文化的に許されるかを考えると「本物のコーヒが飲めない」ことが最大のストレスだったこの国の、戦争の影響の違いに唖然とさせられるのだ。