北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

子供は実験素材ではない

f:id:jensens:20161123171238j:imageデンマークは課題先進国とよく言われる。様々な社会的実験が行われているし、新しい試みも次々とみられる。アジャイルは、デンマークお家芸とでも言えるだろう。

子供に関する先進的取り組みも多々みられる。デンマークにおいて養子はもはやタブーではなく、試験管ベイビーといった体外受精やドナー(精子卵子・母体)も、だいぶ普通の選択肢になっている。旦那はいらないと、種だけ入手して一人で子育てする女性が雑誌に特集されてたり。

結婚や永遠の誓いに基づく家族制度、夫婦二人の「愛の結晶」として子供を持つといった考え方は、もう旧石器時代の遺物のような扱いを受けているようだ。16年発表の15年統計では、離婚率は47%。前のパートナーの子供をお互いが連れて再婚し、新たに子供をもうけるというケースも珍しくない。

 離婚や再婚もそれぞれの事情があるだろうし、それだけを指摘したいわけではない。ただ、忘れてはいけないのは、親の事情はどうあれ、子供は苦しむということだ。一般的な考え方として、親がいがみ合っている中で子供が生活するより離婚した方が子供のためになると、デンマークでは言われる。それもそうかもしれない、大人にとっては。ただ、子供にしてみれば、苦しむことに変わりない。

この春、娘の同級生の親が離婚した。母親はボーイフレンドと住み、子供は、一週間ずつ、父親と母親の家を行ったり来たりする。娘の友人は留年し今は1年生だ(娘は2年生)。つい週数間前、別の同級生の両親が別居し始めた。その子は、私が話しかけても話さなくなった。とっても朗らかだった女の子が苦しんでいるのがわかる。

デンマークは、60年代に家族の枠組みを大きく変えた。今世界のあちこちで起こっていることだ。デンマークは、大きな社会実験の結果をどの国よりも早く経験している課題先進国となった。

この記事「寿命が永遠になっても結婚式で「永遠の誓い」できる?/スプツニ子!さんに聞く、未来の結婚観」を読んで、吐き気がした。「永遠の誓い」の部分ではなくて、最後の方のくだり「独身バツイチ経営者」風の子育てモデルだ。

実験は科学者のサガ、思考実験だってすればいい。デンマークにも実際に養育費を払い続けて、子供に年に数回だけ会っているママやパパもいる。ただ、子供は一人の心がある人間だ。子供は、試しに産んで見るもんじゃない。人一人育てるのは、ほんとうに簡単じゃない。生まれてしまえば、なかったことにもできない。予定通りに物事が動かないから子育ては大変なんだ。効率的に、計画的に子育てができるわけがない。ましてや、「いいとこ取り」のためだけに子供を産む(男女ともに)ということは、結果的にそうなってしまった人たちとは違う。男性だって許されないよ?!

チャウシェスク政権の社会の子供や、東ドイツで、親がいるのに見せしめに養子に出された子供たち。大きく見れば体制の社会実験だけれども、被害者である個人は消せない傷を抱えて一生を送る。