北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

北欧の食事情

 

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White Guideという北欧発のレストランガイドがある。ミシュランがフランス発のレストランガイドとすると、その北欧版とでも言えるのがWhite Guideだ。欧州の僻地にある北欧のレストランでも、ミシュランの星や推奨をもらうレストランが近年増えたけれども、White Guideは、北欧に特化したレストランガイドを提供しているが故に、北欧在住者にとっては何よりも嬉しい高品質のレストランガイドだ。

 Trip Adviserや食べログなど、気軽に使えるレストラン評価サイトは多々あるけれども、特に北欧のレストランで一定水準以上の価格帯のレストランに関して口コミレビューはあまり参考にならない。さらに、White Guideには、デンマーク人には評価が高いけれども個人的にはNGなポピュリズム・レストランが掲載されていないことを知って、さらに評価が急上昇○。普通の人の口コミ評価ではなく専門家が専門家の視点で評価するからこそ、ミシュランはその独自の地位を獲得したのだろうし、レストラン評価の独自の評価軸を持つ北欧のWhilte Guideも同じだ。北欧の食環境を理解しつつレストラン評価をしているWhite Guideのアウトプットは信用できる。少なくとも、今までWhite Guideでオススメされたちょっと田舎のレストランで失敗した試しがない。

 

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そんなホワイトガイドのご招待を受けて行ってきましたSølystCooking in Motion。Sebastian Mazzolaと酒ソムリエのSussie Villaricoが主宰するCooking in Motionが、White Guideの2018年ラウンチを記念して、イベントを多数開催しているSølystでポップアップ・シェフディナーを開催。

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(席に通される前に頂いたアペタイザー、Arlaの高級チーズラインunikaのチーズ。柚子の日本酒ドリンクがカップリングされた)

Sølystは、500年ほどの歴史を持ち昔は王族が狩をする際に拠点にした御屋敷だったそうで、現在でも狩猟クラブなどが常宿としているんだそうだ。雰囲気あふれる玄関や各部屋、王室関連の紋章が飾られている部屋など美術館にいるような時間だった。さらに、ディナーは長テーブルに10カップル同士が同席。席に通された時は緊張の一瞬だったが、意外と楽しかった。

 

(茶碗蒸しと黒トリュフ !組み合わせと強い香りの日本酒がこれまたベストマッチだった)

舞台も素敵ながら、内容がまた垂涎もので、11皿で構成されるディナーには、ほぼ全て日本酒カップリングが提供される。 日本酒を日本食ではないものと合わせて飲むというのも新しいながら、ワイングラスに注がれるその飲み方も新しかったし、10種類の全く違う日本酒を一度の機会に飲むって、日本酒イベント試飲会のような機会でしかないわけで、食事に合わせて、解説つきで飲む日本酒の幅の広さに改めて感銘を受けた。同じテーブルに着いた面々は、日本酒をあまり飲んだことがないという人が殆どだったけれども、以外と楽しんでいたようだった。中にはあまり日本酒っぽくなくワインっぽい感じの酒や、甘いお酒、発砲酒のような酒、老酒のような古酒などがあり、変化に富んでいたのも良かったんだろう。

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日本酒を昔から身近に感じている日本人が気がつかない新しい飲み方が沢山あり、そんな新しい飲み方は、日本酒に慣れ親しんでいる私たちにも美味しく感じられる。最近では、独特のこだわりで日本酒を発掘しデンマークに輸入しているKita SakeのJakobさんから、美味しい日本酒の謹呈を受け、指示通りにオイスターと酢漬けのニシン、チーズと一緒に食した。デンマーク人が大好きな食材と日本酒がとっても相性がいいってこと、その話も近いうちにしたいと思う。

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(美味しくて写真を撮る前に一口食べしまったレモンコーヒー)

デンマークの(特に新北欧料理)レストランには、一種の計算し尽くされた独自のデザインがある。デンマークに旧来からある3皿料理の形(前菜は海産物、メインが肉料理で、デザートやチーズと構成されるコース料理)も継承しつつ、ワインのカップリングといった新しいカタもある。デンマークの食事情はこの10年で大きく変わり、当初スウェーデンのレストラン本だったWhite Guideも今では北欧全域、バルト三国までカバーするようになっている。北欧の食事の楽しみ方はひとつのサービスとしてデザインされ、独自性を出しつつ北欧料理は発展している。デンマークに住む身としては嬉しい限りだ。