北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

北欧の知られざる歴史を日本語で聞ける衝撃

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2022年の夏のマイブームは、歴史だ。ひょんなことから歴史の繋がりを見せてくれるポットキャスト「コテンラジオ」の存在を知り、大航海時代やスペインの覇権の詳しいストーリーが今までにないほど色を帯びて、目の前に広がる欧州の街並みに重なって見えるようになった。それが夏のポルトガル旅行前だったから、「コテンラジオ」になおさらはまった。目の前にある歴史あふれる町並みに、もう消えてなくなっているはずの人たちや当時の空気が見えるような気がした。世界の偉人が、単なる「偉い人」ではなくて、一人の人間の姿で見えるようになった。

旅行から帰ってきてからも、隙を見つけては聴き続け、偶然耳に入ってきたのが、RUSという言葉だ。あれ?RUS!?そうだ、以前、紹介したオーフス近くの美術館で感動した展示「デンマークの美術館:Moesgaard Museum Vol.2」で紹介した「RUS」だ。

コテンラジオ」でRUSが紹介されたのは、ウクライナ🇺🇦を特集した特別回の第一回目で(ウクライナとロシア)、そこで話されていたのはウクライナの建国の歴史。それまで、RUSについては、日本語で聞いたことも読んだこともなかったから、美術館の展示で見て(デンマークの美術館:Moesgaard Museum Vol.2)、また、「コテンラジオ」でも聞いて、この偶然に小躍りしたくなるほど嬉しかった。

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モースゴー美術館の展示は、ヴィジュアルに美しく情報量も多かったが、正直、きちんと理解できているのかあまり自信がなかった。だから、日本語で改めて聞けた時の感激はいかに。そして、日本語で聞けるっていいなと、改めて思った。頭にスッと入ってくる。

北欧の歴史に関心があったら、「コテンラジオ」オススメ。北欧に関心なくてもオススメ。

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デンマークの美術館:Moesgaard Museum Vol.2

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Moesgaard Museum(モースゴー美術館)に行ってきた。オーフス(Aarhus)南に位置するモースゴー美術館は、建築も環境も素晴らしく、展示も今までがっかりさせられたことがない。よっぽど優秀な学芸員がキュレーションしているんだろうか。

一般的には、デンマークの美術館というと、コペンハーゲンから電車で1時間北にいったところにあるルイジアナ美術館オーフスのAROSが挙げられることが多いが、私の中では、モースゴー美術館がかなり上位に来ている。とても素晴らしい美術館で、感動のあまり以前にも記録を残したことがある。あまり日本の人が行かないのは、コペンハーゲンからは遠い、車がない場合のアクセスはあまり良いとは言えずオーフス駅からバスで15分ぐらいかかるから、だろうか。とっても勿体無い。

 

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今回は「RUS:東方のヴァイキング」の展示に惹かれていたこともあり、機会を得て行ってきた。天気も良く、緑豊かなMoesgaardを訪れるにはまたとない絶好の日和だ。

まずは、自然が広がる景色や子供をあやすヴァイキングの末裔の姿を楽しみながら素晴らしい美術館カフェで素敵なランチを味わい、満腹になってから展示に向かった。

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Hven/Ven島に行ってきた

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夏が来た。

というのは大袈裟にしても、ここ数日快晴の心地よい日が続く。八重桜が満開になり、菜の花畑があちこちに黄色い絨毯を広げている。

天気良さそうだからきっと自転車日和だよ、と、以前から何度も話題に上っては断ち消えていたHven/Ven島に日帰りで行ってきた。

自転車で簡単に回れてしまうという小さな島は、かつて(もちろん)デンマーク領だったが、今はスウェーデン🇸🇪の一部だ。

人魚姫の近くから出るフェリーで、1.5時間。両側にスウェーデンデンマークを見つつ、気がついたら島に着いていた。

1日自転車で探検しただけだけれども、天気も良く程よい気分転換になった。特に目新しい行動ではないが、記録しておく。

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スピリッツ/Spirit of Hven

ヴェン島では、国際的にも評価されているスピリッツを製造している。ウイスキーは、スコットランドでも賞を取っているそうで、単なるスウェーデンの自己満足ではない。製造されている全てのウイスキーやスピリッツは、厳選された穀物スウェーデン産の穀物を使用し、完全に無添加・オーガニックなんだそうだ。

醸造所に行き、見学し、テイスティングもさせてもらった。ランチも食べたが、選択肢にスピリッツは見当たらず、(ベルギー🇧🇪の)ビールを飲んだ。

そして、せっかくだからお土産として何本か買っていくかと思いきや、笑えることに…、販売はしてくれなかった。スウェーデンでは、お酒は公営の酒屋でしか買えない。ものすごく販売機会を逃しているぞ、spirits of Hven。

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自転車レンタル

島はとても小さく、自転車で数時間で一周できてしまう。道路はそれほど広くないし、牧歌的な景色はのんびり見るのがいい。そして、そんな島は、自転車レンタルで回るのが人気だ。

 

Tycho Brahe ティコ-ブラーエ

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(デンマーク人の発音では)チュコ・ブラーが天体観測をした地。当時のデンマーク王🇩🇰 フレデリック2世にヴェン島の邸を下賜されたとのことで、この島を拠点にし、数々の天体観測や記録を作ってきたんだそうだ。

正確な天体観測を成し遂げ、助手のケプラーは、のちにチュコの天文観測データを使用してケプラーの法則を発見したそうだ。

小さいが昔の教会の建物が美術館になっている。Wikiを読むと鼻がシルバーで作られていたとか、笑える話がいっぱいだ。

 

デンマークの美術館:ルイジアナ美術館(Louisiana)

春先のルイジアナ

ルイジアナ美術館 は、デンマーク旅行する人が必ず目指すとも言っていいモダンアートの美術館だ。立地も景観もとてもよく、目の前に透明度の高い海が広がり、庭園が美しい。「世界一の景観」とも言われるのも納得だ。日本人のランドスケープアーキテクトに聞いた話だが、ルイジアナは、海底美術館の元になっているそうだ。そう言われて、初めて、ルイジアナ美術館が海抜下に位置している事を知った。

国際的にも注目される美術館ということもあり、尖った前進的な展示が多く、社会的な問題提起がされる。行くたびに脳内が爆発しグルグルとあらぬことを考えすぎてしまうので、個人的には、気軽に行けない美術館としてブラックリストに入れている。

2022年5月の企画展示はいくつかあるが、60−70年代に米国で活躍したポートレートDIANE ARBUSと都市計画建築家Peter Cook – City Landscapesが、今回も脳内から離れてくれない。

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未来の図書館の姿:オスロ中央図書館(Diechman Bjørvika Library branch)

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オスロ図書館:Deichman Bjørvika Library branch は、2020年に開館した新しいオスロの図書館だ。ビョルビカ(Bjørvika)地区に立地し、オスロ中央駅やオスロ・オペラハウス:Oslo Opera Houseに隣接するロケーションの良い場所にある。他の北欧の新図書館におとらず、ノルウェーオスロ公共図書館は、未来の図書館の香りを漂わせている。

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9歳にワクチン接種をするとき

12歳以下へのワクチン接種が解禁されたという連絡が政府から届いてから数ヵ月。予約待ちなどもなく、当日も特に待たされることもなく、9歳の息子の2回の接種を完了させた。生誕から数年間受けてきた各種予防注射、たとえば乳幼児期の五種混合などでも感じたことだが、子供に対する注射や治療に際しての、精神サポートの充実具合は、当地デンマークでは半端なく。では、何が充実していると感じたのか?

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あなたがもし10歳で親がアル中だったら

私は、小学生の頃、朝日小学生新聞を読んでいて、いつも「忍たま乱太郎」の漫画を楽しみにしていたが、デンマークにも同様の子供向け新聞がある。その名もBørneavisen(børneは子供、Avisenは新聞)。子供向けなので単語が優しく、ちょっと難しい時事単語などは解説もしてくれるので、意外と面白く重宝している。

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デンマークの子供新聞のウェブサイトより

子供新聞の内容は、時事問題や子供が知るべきと思われる社会課題などが特集される。時事問題には、デンマークの子供新聞らしくかなり議論になりそうなトピックなども掲載されるし、トランプ元米国大統領の弾劾なども特集されていたし、コロナ禍で大活躍しているソーレンさん(Søren Brostrøm, Director General at the Danish Health Authority )が、見開きで登場して、「今年のLGBTの顔に選ばれて嬉しく思う」とメッセージを寄せたりしているなど、国際性・社会性たっぷりの記事構成だ。

以前、『デンマークの国語の教材には、アル中の父親や離婚や別の男性を連れてきた母親が描かれる(継承語と多言語多文化教育)』と書いたが、久しぶりに衝撃を感じた記事が、「アルコール:Emilie、飲み過ぎの父親との子供時代(超訳)」だ。社会的に問題になっているから掲載されたんだろうなと思うと、いっそう胃がキリキリする。

記事を見たときには、なんて衝撃的な内容だと驚きを隠しきれなかった。現在21歳のエミリエさんの愛らしい10歳の時の写真が掲載されているが、注釈と記事からは、「いつも父親は仕事の帰りに飲んだくれて帰ってきて、家の掃除も食事の準備も一人でやっていた頃」だとわかる。友達には、知られたくなかったから普通の家に住んでいるふりをしていたそうだ。

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アル中の父との生活

エミリエさんの両親は離婚している。デンマークでは、親が離婚した場合、2人の子供は親の家を一週間交代で移動することになっていて(それはそれでどうかと思うのだが)、なににせよエミリエさんは、同じ状況下にあった。親の2つの家を行き来している子供は、離婚率50%に近いと言われるデンマークでは、それほど珍しいことじゃない。でもさすがに育児放棄やニグレクトは、周囲にも言いにくいだろうことは想像に難くない、

デンマークの子供たちは互いの家を行き来することも多く、エミリエさんは、荒れた家を友人に悟られないように、なるべく自宅に呼ぶことにならないように気を張っていたらしい。

記事は、エミリエさんが、NPOヘルプラインに助けられたということが描かれ、子供電話の番号や、ヘルプラインTUBAの紹介が後半に出てくる。単なる覗き見趣味ではなくて、あなたたちが同じような状況にいるのであれば、連絡する先はこちらだよ、と助けの手を差し伸べている記事だ。

本当に該当者にメッセージが届いているかは正直疑問だ。困っている子供達が、子供新聞にアクセスできるか読んでいるかわからないし、多分広告出すんだったらTikTokだろうな。でもやらないよりはいいかもしれないし、少なくとも、私には届き、もしかしたら結構大きな社会問題なんだと認識することができた。アル中とヤク中は、社会課題とは聞いてはいたが、子供も巻き込んでいることを再認識させられると、かなり気が滅入る。

改めてデンマークの闇に衝撃を受け、相手が子供でも(子供だからかもしれないが)、闇を太陽の元に晒す努力を続けるデンマークに感心する。

そして、にこやかに微笑む今のエミリエさんの姿に少し救われる。

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