『赤のコテージ』という名前のレストランの噂は、数年前より聞いたことがあった。『赤のコテージ:Den Røde Cottage - Cottagerneは、日本のメディアや雑誌にも何度か登場しているし、姉妹店の黄色のコテージには行ったことがあったから、近いうちに行ってみようと思い続けて早数年。突然思い立って食事を食べに行くことになり、オンライン予約は不可だったのだけれども、電話してみたら2人オッケーとのことで、初トライ。
赤のコテージは、コペンハーゲンから北に向かうクランペンボー(Klampenbrog)という瀟洒なエリアにある。海岸線沿いを北に車を走らせていくと、クランペンボー市エリアにたどり着き、広い公園の中に黄色いコテージがポツンと立っているのが見える。知らなければこれがレストランって気がつかないんじゃないだろうかというぐらい主張せずに立っている古い木造のコテージだ。もう少し車を走らせると海岸線が消え森林に入るのだけれども、その林にひっそりと佇むのが「赤のコテージ」だ。この黄色も赤色も昔からこの地域にある自然塗料を使っていて、黄色・赤色と聞いて多くの人がイメージする色よりは、彩がより繊細で淡い感じの色合いだ。コペンハーゲンを訪問したことのある人ならば、街で使われている淡い色合いの赤や黄色、青を見たことがあるんじゃないかと思う。
ニューノルディックを支えるレストランの一つで、ミシュランの星も長年とっていた(2016年は推奨レストラン)。夕食は3-8皿まで選べるんだけれども、結局お腹と相談で5皿にした(ちょっと多かった...)。日本料理ではそれほど珍しくないが、多くのニューノルディックで採用されている新しい趣向で、赤いコテージでも、季節の素材を使い頻繁にメニューを変える。
9月のメニューは、秋の雰囲気の漂う、ジビエやマッシュルーム、ベリーが多用されている。
カニとカリフラワー、エストラゴンに砕いた黒パンをかけた一品。
たらの焼き物に人参、マメを和えた暖かい一品。
新デニッシュトマト(初めて聞いた)に、ヤギのチーズ。
ひよこを焼いたものに、とうもろこし、カンタレラ(デンマークのマッシュルームでこの季節の珍味)、酢漬けの小玉ねぎ。
ブリー(チーズ)に、ソルベア、ナッツ、トリュフの薄いクラッカー(knækbrød)
レッドカレントに、70%チョコレートと、レッドカレントシャーベット。
出てくる品どれも、上品でしかも深みがある。下処理や味付けを丁寧にやっている印象だ。この辺りが、「見た目ニューノルディックだけれども、なんちゃってノルディックになってしまっているレストラン」との違いがここに出る。
サービスも非常に繊細で、とても心地いい時間を過ごすことができた。8組ぐらいのゲストに対して、サービスは2人ほど。それでも、程よいタイミングで食事が提供され、水を注いでくれる。
デンマークらしいと思ったのが、小さなベイビーがいたこと。時々泣いていたけれども、なんだかそれを許容する暖かい空間で、ベイビーの泣き声を聞いて、なんだか幸せになった。
ここは、夏の夜も寒い冬の夜も暖かい雰囲気を醸し出すことができる場所なんだろう。コペンハーゲン近郊で北欧の自然に触れることができる貴重な場所だ。