北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

ローカライズの種類

f:id:jensens:20160116044714j:image我が家の最寄の駅の一つにHellerupという駅があるのだけれど、その駅の西口(という名前があるわけではないけれども西側の出口)側に、'CAというテイクアウト専門のイタリア料理屋がある。この店は、デンマーク唯一の寿司屋Selfishと似たような店構えで、メインはテイクアウト、店舗にも数席食事ができるスペースが作られている。

このイタ飯屋、コペンハーゲンには珍しく本物のイタリアンが手ごろに食べられる所で、予約なしに訪問しても、なかなか席は取れない。いつ行っても常連がひしめいてる状況だ。この店は、最近知り合いがアップしていたミケラーのラーメンとビール(コペンハーゲンに12月にできたラーメン屋)に行った時の考察「ローカライズしない方が価値を生む?」と類似点が多々見られて、非常に興味深い。つまり、「部分部分のユーザビリティは低くても,顧客の総合的なエクスペリエンスの満足度は高くなるという不思議な結論になる.心地よさを狙わないこの攻め方,"闘争としてのサービス(by山内先生)"を想起させる取り組み」の店、という点。

ここは、ローカライズされていない(デンマーク仕様でない)イタ飯屋であって、それが差別化要因となっている。まず、店の人たちは、イタリア語が基本で英語は第二言語らしいということ。シェフはイタリア語しか話してなかったし、店頭に立っている女性も基本イタリア語か英語だ。デンマーク語は…、聞こえない…。常連っぽい人たちも、デンマーク語で話しかけるけれども、帰ってくる言葉は英語かイタリア語。そもそも店の戸を開けると呼びかけられるのは「ブオナセーラ」だし、帰るときは「アルベデルチ」。デンマーク語で話しかけて、英語かイタリア語で返答され、それに対して英語にスイッチして返答するデンマーク人。もしくは、しばらくデンマーク語で返すんだけれども、そのうちに英語にスイッチするデンマーク人。

驚くべき所は、デンマーク人の英語能力の高さなのだろうけれども、正直一番おどろいたのは、英語やイタリア語で通す店の対応だったりする。

f:id:jensens:20160116050846j:imageそれに、なんというか…雰囲気もイタリア。初めて食事した時も、悩んで選ばなかった方のドルチェをお土産にもらっちゃったし、お店の人とハグして帰路についたりして。しばらくデンマークにいることを忘れてました。ローカライズも、その土地の許容度によって様々な形がありうるのだ。

デンマークには、イタリア文化をよく知っている人も多く「機が熟している」ということも言えるんだろう。心地よさを狙わないというか、そこに見られるのは「苦労しても本物に触れる心地よさ」なんだろうと思う。

ちなみに味も言うまでもなく「まるでイタリア」。