北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

ブラジル旅行のススメ

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ブラジルは、飛行機で北欧から15時間ほど、西欧からは11時間ほど。日本から30時間以上かかることを考えると、北欧が生活の拠点であったら、行っておきたい場所の一つだ。

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アマゾン川のエリアでは広大な熱帯雨林を漫喫し、見たことのない雄大な景色を堪能できる。リオ・デ・ジャネイロの世界的に有名なコパカバナ(賑やかエネルギーに溢れる) やイパネマ(静かで上品) などの世界的に有名なビーチでは、開放的なラテンの雰囲気に浸ることもできる。各街でポルトガル支配下の名残ともいえる古い町並みや欧州列強の植民地時代の爪痕を垣間見ることができる。街を歩いているとあちこちに深い歴史を感じさせられる。いわゆる繁華街は、先進国の繁華街と変わらない。デザイン性に富んだインテリアのレストランやデンマークと変わらない価格帯のレストランやショップが並ぶ。そんな繁華街のレストランはクオリティも高く、見た目にも味もなかなかの料理を堪能することができた。そして、その華やかな街に集うのは、ファッショナブルな若い人たちや身なりの綺麗な夫婦や家族だ。

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私が再びブラジルに行きたいかと問われると、正直わからない。ポルトガル語がわかれば、現地に知り合いがいれば、もう少し興味深い国になるかもしれない。


アマゾンの奥地のはずの熱帯雨林では普通にWifiも繋がるし、いわゆる原住民に会えることはほぼ皆無だ(コロナ禍で原住民の被害は甚大で、いわゆるツーリズムも休止状態らしい)。原住民に会えたとしても、皆さんがイメージしている「アマゾンジャングルの暮らし」からはほど遠く、テレビもあれば、冷蔵庫も使っている(Amazon Eco Lodgeのガイド曰く)。危険な街といわれがちなリオ・デ・ジャネイロも、それなりに用心していればイメージするほどの危険を感じることはないだろう。何よりも、旅行中に出会った大学の学生・研究者たちやホテルやレストランのブラジル人、街中を歩いている人たちは、とても素敵な素朴な人たちだった。時にはしつこい物売りの人たちですら、またファヴェーラ(貧民街)の人たちでさえも、怖いというよりは人懐っこく好感が持てた。

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ただ、知れば知るほど社会格差の歪みが目に映り、耐え難くなっていく。美しく着飾りインスタ映えする写真撮影に夢中になる少々肥満気味のティーンたちや、ファッション雑誌からでてきたような若い母親が昼間からカフェで談笑している一方で、街角にはホームレスが横たわり、異様な悪臭をまとい行商する子供達や観光客に言葉巧みに近づく物売りもいる。

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慶應義塾で山下晋司先生の『観光人類学』という授業を受講したことがある。すでに20年以上も前のことだ。そこでは、観光において「文化は必ずしも無意識の慣習ではなくなり、むしろ意識的に操作され、政治的に取引され、観光のコンテクストに演出され、消費されさえするもの」であると学んだ。だから、実際に訪問してみると、アマゾンでWifiが繋がること、ファヴェーラの住民がテレビを保有し、快適な家に住み3食不足していないことに違和感を覚えつつ、いかに人工的に造られたイメージを現実のものとして捉えているかに気付かされる。


そして、それは楽しくもない旅行であったとしても、日常から非日常の移行体験としては、これ以上の旅行らしい旅行はないのではないかと思う。私のブラジル旅行は、元はディーン・マッカネルがいうところのAuthenticityの探求という旅の王道を辿っていたに過ぎない。そして、私は王道から外れ、Staged Authentisityから舞台裏をのぞいてしまった。

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