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北欧生活研究所

北欧在住11年。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

ワークショップのオーガナイズを考える

f:id:jensens:20160924114902j:imageワークショップオーガナイザという職種の人に会ったことがあるだろうか?最近関わっているプロジェクトREACHで、参加型Co-Designのワークショップを実施しているのだが、ワークショップでは、そのワークショップオーガナイザが活躍している。

REACHプロジェクトのワークショップオーガナイザーのタスクは、4カ国で開かれる全ワークショップの構成を練り、テンプレートを作り、関係各所を呼び込み、ワークショップを実施すること。今まで本プロジェクトでは、4ヶ月の間に、3カ国でワークショップが実施されている。

チャーミングなオーガナイザ・ジムは、即興で記録を作り、周囲を巻き込んで、視覚的な共有財産を蓄積させていく。ジムが作り出すワークショップの枠組みは典型的なデザインワークだ。プロセスもデザイン手法の王道を行き、発散フェーズから収束フェーズへと移行していく。中でも素晴らしいのは、彼本人のその記録能力やファシリテート能力だろうか。意見をうまく汲み取り、短いキーワードで記録しまとめあげ、参加者は、15分も経てば周囲にはA0の記録用紙が所狭しと掲示されていることに気づくだろう。そして結果はどうあれ、やり遂げた感、満足感が残る。ただ、正直に言おう。グループにジムが入るかどうか、別のメンバーがファシリテートするかどうかで、意見がうまく出されるか、盛り上がるか、果ては参加者(少なくとも私)のワークショップ参加の満足度は大きく変わる。

そして、結果の満足度が高いかどうかは、少なくとも現プロジェクトではオーガナイザ・ジムの個人的な対人スキルやたくさんの引き出しを持って進めるワークショップ手法に依るところが大きいことを、回を重ねるたびに実感させられている。

ワークショップの構成、そして何よりもワークショップオーガナイザーやファシリテーターの能力によって、ワークショップ慣れしている人や逆に慣れてない人の参加度合いが大きく変わる。この「ワークショップがうまく運営されるかどうかは、構成よりは、主導者個人の技術に依ることが多い」という実感は、REACHプロジェクト外でも感じている。

ワークショップオーガナイザという職種は、今後どのように展開していくのだろうか。日本でもワークショップ研究をする人たちが増えてきているようだし、グラフィックレコーダなども活躍しているみたいで、ワークショップは今後もっと増えていくだろう。

だからお願いしたい。一つのワークショップに参加して納得できなくても、そこで全てのワークショップを否定しないでほしい。少なくとも北欧の参加型デザインやcodesignは、様々な手法やツールを駆使して、ファシリテーター依存を下げる工夫をあちこちに組み込んでいる。手前ミソだけれども、オランダ流ファシリテーション(ジムはオランダ出身、オランダのデザイン教育を受けている)の手法を通して、やっぱり北欧の手法は面白いんじゃないかと思った次第。

ガーダーホイフォート:戦争ごっこ

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少し前の週末に近くの要塞でイベントがあるということで、子供を連れて出かけた。Garderhøjfortと呼ばれるこの要塞は、コペンハーゲン最大の要塞で、Jægersborg駅からほど近い場所にある 。地下要塞が作られていて、作られたけれども使われなかったダブルキャノンが設置されている。この日のイベントは、要塞見学や大砲の発射、野戦食(?)が食べられるというものだった。行ってみて、いやぁ、驚かされた。

要塞の周辺には、1943年(後で知った)の軍服の軍曹や女性兵や看護師が歩き回っていた。第三帝国の腕章をつけ、デンマーク国旗を腕に縫い付けたドイツ軍服の男はタンデムを運転し、ものすごい音を出しながら、要塞を監視している。たくましい白髭を蓄えた軍曹風の男性も若い兵士と談笑しながら要塞に入っていくし、古風なナース帽に、長いスカートを履き、木製の救急箱を抱える女性看護師が要塞と外を忙しそうに行き来している。赤いルージュをつけ、膝丈のスカートを履き、さっそうと歩き回る女性兵(当時の服装だから今から見るとちょっとやぼったいんだけれども、それがまたかっこいい)、外の炊き出しでスープを混ぜる一等兵(?)。一瞬、自分がどこにいるのかと、タイムトラベルでもしたような感覚に陥った。まるで、テレビのセットもしくは過去の一ページに自分が入り込んだかのようだ。

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ホームページによると、この要塞は、市民による保存運動にも関わらず、コペンハーゲンをはじめとした地方自治体の支援を受けることができず、市民がネットワークを作り資金を捻出、2013年9月に公開が始まったものだそうだ。初公開時には、デンマーク科学技術館(Experimentarium)が支援し、その名残で内部の展示物には、英語とデンマーク語の両方で解説がつけられている。

もちろん、保存状態が良く、内部の地面を掘って作られた秘密基地的な雰囲気も圧倒されるものの、何よりもこの「場」自体、その雰囲気に圧倒された。具体的に何に圧倒されたかを考えていくと、"1943-45当時の軍人になりきって要塞のそこらかしこで歩き回る人たちの真剣さ"にたどり着く。ヴァイキングオタクたちと同じように、当時の食器、当時の洋服など(おそらく自作)をを着込んで、司令室で大きなマップを前になにやら話し合っていたり、当時のタンデムバイクに乗り込んでエリアを疾走したり...。その当時の生活を再現しているのだ。この人たち、以前、デンマークのオタクたちで、見た軍隊マニアと同じグループと思われる。彼らの本名は、Danforce Bataljonen。多分にもれずフェイスブックページもある(Danforce Bataljonen)。

jensens.hatenablog.com

戦争オタクと言っても特に危険思想などとは関係なさそうで、単純に当時にロマンを感じ、週末に当時の生活に耽って楽しんでいる朗らかな人たち(にみえる)。

彼らを見ながら、第二次世界大戦の傷跡が深く残る国で、このような演技がどこまで楽しみとなり、社会文化的に許されるかを考えると「本物のコーヒが飲めない」ことが最大のストレスだったこの国の、戦争の影響の違いに唖然とさせられるのだ。

赤いコテージ

f:id:jensens:20160907040725j:image『赤のコテージ』という名前のレストランの噂は、数年前より聞いたことがあった。『赤のコテージ:Den Røde Cottage - Cottagerneは、日本のメディアや雑誌にも何度か登場しているし、姉妹店の黄色のコテージには行ったことがあったから、近いうちに行ってみようと思い続けて早数年。突然思い立って食事を食べに行くことになり、オンライン予約は不可だったのだけれども、電話してみたら2人オッケーとのことで、初トライ。

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赤のコテージは、コペンハーゲンから北に向かうクランペンボー(Klampenbrog)という瀟洒なエリアにある。海岸線沿いを北に車を走らせていくと、クランペンボー市エリアにたどり着き、広い公園の中に黄色いコテージがポツンと立っているのが見える。知らなければこれがレストランって気がつかないんじゃないだろうかというぐらい主張せずに立っている古い木造のコテージだ。もう少し車を走らせると海岸線が消え森林に入るのだけれども、その林にひっそりと佇むのが「赤のコテージ」だ。この黄色も赤色も昔からこの地域にある自然塗料を使っていて、黄色・赤色と聞いて多くの人がイメージする色よりは、彩がより繊細で淡い感じの色合いだ。コペンハーゲンを訪問したことのある人ならば、街で使われている淡い色合いの赤や黄色、青を見たことがあるんじゃないかと思う。

ニューノルディックを支えるレストランの一つで、ミシュランの星も長年とっていた(2016年は推奨レストラン)。夕食は3-8皿まで選べるんだけれども、結局お腹と相談で5皿にした(ちょっと多かった...)。日本料理ではそれほど珍しくないが、多くのニューノルディックで採用されている新しい趣向で、赤いコテージでも、季節の素材を使い頻繁にメニューを変える。

9月のメニューは、秋の雰囲気の漂う、ジビエやマッシュルーム、ベリーが多用されている。

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カニとカリフラワー、エストラゴンに砕いた黒パンをかけた一品。

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たらの焼き物に人参、マメを和えた暖かい一品。

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新デニッシュトマト(初めて聞いた)に、ヤギのチーズ。

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ひよこを焼いたものに、とうもろこし、カンタレラ(デンマークのマッシュルームでこの季節の珍味)、酢漬けの小玉ねぎ。

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ブリー(チーズ)に、ソルベア、ナッツ、トリュフの薄いクラッカー(knækbrød)

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レッドカレントに、70%チョコレートと、レッドカレントシャーベット。

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出てくる品どれも、上品でしかも深みがある。下処理や味付けを丁寧にやっている印象だ。この辺りが、「見た目ニューノルディックだけれども、なんちゃってノルディックになってしまっているレストラン」との違いがここに出る。

サービスも非常に繊細で、とても心地いい時間を過ごすことができた。8組ぐらいのゲストに対して、サービスは2人ほど。それでも、程よいタイミングで食事が提供され、水を注いでくれる。

デンマークらしいと思ったのが、小さなベイビーがいたこと。時々泣いていたけれども、なんだかそれを許容する暖かい空間で、ベイビーの泣き声を聞いて、なんだか幸せになった。

ここは、夏の夜も寒い冬の夜も暖かい雰囲気を醸し出すことができる場所なんだろう。コペンハーゲン近郊で北欧の自然に触れることができる貴重な場所だ。

Skovens mørke bær, havesyre, toffie og brændt hvid chokolade.

Hindbær, Nicaliso chokolade 70% og hindbærsorbet.

 

デンマークのIoTのポテンシャルが高いと思うのは

f:id:jensens:20160828215108j:image最近複数の人からデンマークのIoTやビックデータ、AIなどのIT事情について質問を受ける。電子政府進展などの影響もあって、北欧は進んでいるんじゃないかと思われるようなんだけれども、インダストリ4.0や日本のIoTの状況、また色々な情報を聞いていると、現段階では、北欧で特に目立った成果が上がっているわけではないように思う。

ただ、ポテンシャルとして北欧で様々なサービス(特に公共系で)が花開く可能性は多いにあるんじゃないかと思うのだ。

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良い公共スペースを構築するための『型』

f:id:jensens:20160828052144j:image最近、日本のニュースで築地市場の移転に伴う混乱や不満について耳にした。築地の移転の話は、以前よりメディアで聞いていたし、移動先となる豊洲の土壌汚染の話なども聞いていたのだが、特にアンテナを立てていたわけではないので、その進展具合や課題がいかに解決に進められているかという話を聞くことがなかった。今回のラジオ番組で知ったのは、利害関係者の合意形成や理解が不十分なのに、もう移転の日程が確定しているということ。そして、推進派と懸念派が対立しているということだ。

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デンマークのヘルスケア・ビックデータの現状

デンマークの医療

f:id:jensens:20160816183356j:imageデンマークは、個人番号(CPR)が68年から導入され、医療情報データベースも77年に構築され、様々な個人医療保健データが、個人番号に紐付けされて蓄積されている。だから、ビックデータ、IoTの時代におけるデンマークの優位性は確固たるモノだ。そんな話を聞いたことがある人も多いかもしれない。

ただ、実際の所、データベースの互換性が70年代のレガシーシステムから確保されているわけではないし、統合やネットワーク化が想定されていなかった時代から蓄積されているデータを「ビックデータの時代です!」といって即座に活用するということはかなり困難だ。だから、CPRが鍵になり大量の高品質ヘルスケアデータが蓄積されているいう状況であっても、CPRを軸に個人データを抽出し、社会的状況と病気の関係などを分析したり、健康データと知能の関係なんかを割り出すといったようなことが簡単にできるわけでは全くない。デンマークのテク系エッジの効いたデザインコンサルLeapcraftのレポート(Mapping the Healthcare Data Landscape in Denmark)によるとデータエントリーは、初期医療で16箇所、高度医療で15箇所あるというから、それをいかに統合し活用するかは大きなチャレンジであり可能性でもある。

ただ、世界的に見ると、より優位な立場いることは確かだ。リッチなヘルスケア情報が70年だから個人番号を鍵として関連各所で蓄積されていることは事実で、分散し、異なるデータセットの枠組みである状態であったとしても、それは宝の山でありダイヤの原石だと言えるのではないかと思う。

現在の私が関わる研究プロジェクトの一つに、EU資金を獲得して始められたREACHプロジェクトがある。このREACH2020は、4カ国17組織(大学、医療保健関連機関、企業)があつまる700万ユーロのEUプロジェクトだ。このプロジェクトは、高齢者の健康維持・個人にテーラーメイドされたヘルスケアを提供するためのサービスシステムの開発を目的とするもので、モチベーション技術やセンサーを活用して、治療やケア環境を個人ニーズに合わせる方法が模索されている。その鍵となるのは各種センサーなどIoT(Internet of Things)だ。いわゆる一般的にIT機器として認知されるようなロボットのようなもではなく、ネットワークに繋がるセンサー内蔵型の家具やムードセンサー、バイタルセンサー、活動測定センサーなどの環境に溶け込み、リアルタイムでデータを収集し、結果的にさりげなく健康維持や回復を支援し、運動を促すことに貢献することができる可能性を秘めたインターネットに接続されネットワークされたモノ、IoTである。

仮にこのREACHプロジェクトで収集される個人のバイタルデータや行動データなどを、個人の病歴や健康履歴とリアルタイムでクロス分析することができれば、より長期的な視点からの望ましい治療方法やリハビリ方法、健康促進手段につながるんじゃないだろうか。長年のヘルスケアデータの蓄積があるという意味で、このような近未来の(予防)医療が国家規模で実現に近い場所にいるのがデンマークなのではないかと思う。

ちなみに、IoTは様々な分野で注目されているが、よりポテンシャルが高いと思われている分野の一つとして、医療保健健康分野がある。デンマークのITを考える上で、またIoT、ビックデータを考える上で、この分野はかなり面白い試みがされている。

 

uberが成立しない国

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7月初旬、uber運転手が40項目近く法に抵触しているとの判決がコペンハーゲン裁判所で下された。もちろんタクシーの運転手が2014年の導入以来声高に廃止を唱えていたんだけれども、一つ決着がつきかけているようだ。

デンマークはタクシーの運転手はライセンス制。無駄にタクシーを増やさないように、またクオリティを保つように労働組合が頑張っている。比較的快適な車内に、高額のタクシー運賃。uberを使ってみたけれど、運転手は比較的怪しいし、料金もそこまで変わらない。意図的なものを感じるけれど、uber車内でのレイプなどの報道も比較的よく見る。

一方、発祥の地米国で使ってみたuberは、かなり快適だった。価格は1/3、車内は清潔で、運転手もとても礼儀正しい。ピアレヴューがかなり功を奏しているようで。

一般的タクシーとのクオリティの差が、uberの浸透に影響を与えているとみた。米国のタクシー、汚いし臭いし、シート破れているし…。でもそんな状態ではuberの許可は下りないんだろう。

新しいアイディアも社会状況によって受容度合いが大きく変わる。