北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマークは汚かった?!

デンマークで子育てを始めた時、子供の体脂は産んでからしばらくそのままにしておく(軽く拭いたりはするけど)とか、乳幼児でも風呂は週に一回以上は入れるべきではないとか、日本との常識の違いに大いに驚いた記憶がある。その時は、風呂に子供が毎日入らないのは、乾燥している地域であり、汗もそれほどかかないし、(多分)皮膚も汚れないから、毎日風呂に入るのは逆によくない、身体の新陳代謝に沿うべきだという説明に、ふむ、そうなのかもしれないな、と思わされていた。

昨年末にたまたま本屋でブラブラしていたときに見つけた「図説 不潔の歴史をようやく読了したのだけれども、今はデンマークの常識にまったく違う理解を持つようになった。つまり、ぶっちゃけ欧州人(書籍では米国との比較で主にフランス、イタリア、英国など西ヨーロッパが描かれているが、北欧も似たようなものだろうと推察される)の衛生感覚や水に対する認識は発展途上であるということだ。

図説 不潔の歴史には、水が嫌悪されていたことや信心深い人ほど身体の衛生に無関心であるべきと考えられていたことなどが描かれ、それだけでも驚きの連続であるが、キリスト教の歴史や史実が現在の欧州人の生活にいかに繋がっているかを、改めて考えさせられた。水の代わりにワインを飲むとか、ワインで体を洗うとか、欧州人の(昔の)習慣は理解に苦しんでいたのだけれども、そんな宗教の授業で見聞きしたことや毎日の生活で疑問に感じていたことで、ようやく腑に落ちたことが多々あった。フランスの油脂が含まれるボディスクラブやオイルで体を洗う習慣なども、きっと皮脂をとりすぎないようにと考えているんだろうと、勝手に解釈していたけれども、今では、これもおそらく古き習慣(汗腺を塞ぐのが良い)から来ているように思える。

子供の学校(デンマークの私立学校)には、週に一度体育の時間がある。そのときに子供達はたいして汗もかいてないだろうけれども全員でシャワーを浴びる。この習慣に関しては、子供のうちは男女が互いの裸を見るべきだとか、理解不能の説明をデンマーク人からもらっていたのだけれども、図説 不潔の歴史によると、このセッションが導入された1920年代は、衛生感覚(病気予防につながる)を学習させるのに両親(宗教教育の成果で水に関して嫌悪感や恐怖を抱いている)を説くのではなく、子供から始める(風呂の習慣をつけさせる)という政治的戦略だったということだ。

フィンランドには、古くからサウナ(汗をかいて皮脂の汚れを落とす)の歴史があるし、出産などもサウナで行われていた(西欧州より衛生的な処置に思える)などと聞く。おそらく、欧州とひとくくりにしてはいけない様々な違いが欧州エリアにもあるだろう。また、日本や米国は、衛生的であることにこだわりすぎ、弊害が生まれているともいうから、洗えばいい、衛生的にすればいいというわけではないことは確かだけれども。