北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

2020年夏Vol.2: ボルドー旅行の勧め

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ワイン畑があちこちに広がる

ワインを飲むようになってから、ボルドーがずっと気になっていた。新大陸より欧州、イタリアよりフランスのワイン。ブルゴーニュよりもボルドー。心をがっつりつかまれるような深い濃い色と渋みの強いボルドーワインの味。年を重ねたワインは余計に味が出てくる。口の中でずっと大切にしておきたいような丸みを帯びた不思議な感覚に変わる。結婚式のワインにと大好きな義理の父が選んでくれた結婚パーティの赤ワインがサン=テミリオンのシャトーワインだったのも何かの縁かもしれない。これは、秘密だけれども、昔付き合ってた人はボルドーワインが大好きだった。だから私の中では、ボルドーワインは、大勢で楽しむのもいいけれども、一人でグラス1杯ちょっと夜が濃くなった時間に飲むのも悪くない。

 ボルドーに行こうかなとボルドー在住の友人に連絡したら、この社会情勢にもかかわらずすぐに返事をくれた。ボルドーの友人はAeva Toursという(ボルドーや南フランス専門)ガイドのプロだから知識が豊富。小学校の頃からフランス語は抜きんでていて、発音がその頃からうっとりするほど上手だったな...。"自分はワイン巡りをしたいけれども、子供も楽しめる場所を探さなければいけない"と言うと、子供もきっと気にいるからとアルカッションのヨーロッパ一の砂丘子供も喜ぶワインツアーなど次々にアイディアが出てくる。勧めてくれた街や場所をサーチしながらイメージを膨らませ、準備期間2日間で3泊4日のボルドー滞在に出発した、準備も何もあったものじゃないバタバタ旅行だったけれども、今回の旅行で自分の中では一番充実していた数日になった。ワイナリー訪問とサンテミリオン見学、砂丘に行き、これまた友人が教えてくれた観光化されず地元の人たちが行くレストランで地元民と混じってオイスターと貝を食べ、もれなく幼少中高生時代の友人2人と家族でお夕飯。そして郊外のシャトー泊。

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欧州一の砂丘: 天国みたいな景色だった

 

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海の反対側は森が広がる。不思議な砂丘だ。

欧州旅行が楽しいのは何よりも歴史が深いこと。土地の名前から昔の世界史の記憶のかけらが呼び起こされたり、知らない点と点がつながったり。今回のボルドー旅行は、そんなゾクゾクするような嬉しい感覚をたくさん覚えた。ボルドーが12-15世紀にはイングランド支配下にあってボルドーワインは英国に届けられていたとか(えっ?ボルドーワイン独り占め?)、18 世紀には砂糖と奴隷貿易との三角貿易で栄えて、そのころに今残るボルドーの街の豪奢な建築のベースになっているとか。Black Lives Matterとかの今につながる出来事が、全く関係してないように思われるボルドーと深い関係を持っているというこの事実。世界は見えない関係性でつながっていて、多くの場合は気づけない。繋がりが見えることってとても重要だ。つながりがあることで身近に感じられるし、意識も変わるし、行動も変わる。

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サンテミリオンの古い城壁・扉

サン=テミリオン (Saint-Émilion) の街の見学や、ワイナリーの見学は、中でも絶対におすすめのルートの一つ。さらに、知識豊富な現地の友人と一緒に行けると全く違う経験ができる。教えてくれなかったら知らずに通り過ぎてしまうようなちょっとした歴史の一コマや、17世紀に生まれたカヌレカロンがここ発祥であるとか、どうして生まれたのかとかの蘊蓄を聞きながら石畳を歩き、当時の空気を思い浮かべながら歩き回ったり。ユネスコ世界遺産に登録されている要塞都市サン=テミリオンは、1時間で歩き回れるような小さな街だけれども、半日は確実に楽しめる、たくさんの物語が詰まった街だ。そういえば世界史で習ったよね!とか、えー?覚えてないよ、とか、笑いながら日本語で話せたのがとても嬉しかった。

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映画に迷い込んだ気分になる

ワイナリーの見学では、普段は我々のようなまさに初心者を単独で案内することはないんだろうなと思いつつ、ワインのテロワールの話を聞く。小石がたくさんの土地だけれども、これはこの土地のテロワール。昔からワインは、その場所のその歴史の土でワインを育てる。私なんかは、カラカラに乾いているような石混じりの土を見て本当にこれで美味しいワインが育つのか心配になるのだけれども、そんな心配はいらないらしい。水は上げすぎないほうがいい、水を求めて深くまで根が張るようになる。甘やかさないことで、より力強く、甘く、深くなる。

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門を潜るときは緊張が高まる

友人の案内のおかげで、とても丁寧にワイナリーで対応してもらった。20年ものの特別ワインを試飲させてもらったり、子供にもブドウジュースを出してもらったり。その土地でネットワークを広げ、きっといい関係を築いているんだろうなと思わされて思わず心が暖かくなった。

旅行が楽しいのは人とのつながりと出会い。ワイナリー見学@De Mour - Château Tour Baladozではお茶目で男前なシャトー案内人カルロス氏と、@ワイナリーHaut Baillyでは、真面目でエレガントなエステルさん。カルロス氏は、コロナジョークで盛り上がりつつ、知識を織り交ぜて話してくれるその話力にも感服だ。毎日のワインにチョコレート、それが長生きの秘訣。誰がその言葉を信じないなんて言えるだろうか。そして何よりも10数年ぶりにあった幼い頃からの友人たち。高校を卒業してから、それぞれの人生が開け違う道を歩んできたのに、なぜか2020年の夏に2人が同じ場所に住み、3人でボルドーで会えたという事実。奇跡でもあるし、世界の小ささと大きさを同時に感じさせられる。

ボルドーは、古い街だけれども新しい。2000年ごろに市長が主導して、ワインツーリズムに力を入れ始めたのだと言う。ボルドーの街中からトラムが郊外に伸び始めたのもその頃で、郊外と街中の行き来がしやすいように、自転車が通りやすいように街が整備されたんだそうだ。確かに、新しい道路も多くあちこち改良されているところが目に入ってきたし、街中も段差がとても少なく開放的で、トラムも快適だった。

だがなんと言っても楽しいのは、郊外だ。それまでは、訪問しようと思ってもできないワイナリーが多かったり、訪問した人がワインを飲んでのんびりできるような宿泊施設がなかったらしい。それが、ワインツーリズムを産官で進めるようになり、大きく変わった。旅行者が迷わないようにあちこちに看板が立ち、フランス人だけれども流暢もしくは片言の英語で対応してくれる。パリみたいな都市が、たっぷりクリームの乗ったアイスクリームとしたら、田舎はその土地のコメとかパン。味が全部違うし、噛めば噛むほど味が出る。そこに、土地を知っている人がいると最強だ。短期間の滞在でも懐をちょっと覗かせてもらえる。

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アルカッションエリアではオイスターも取れる

そうそう、忘れちゃいけないのが、宿泊したシャトー。今回私たちが宿泊したのは、たまたま子供たちのリクエスト「プール付き」で探して見つけた郊外の「シャトー」だけれども、どちらも瀟洒な雰囲気を出していた。改築が行き届いている古いシャトーChateau de Lantic。オリジナルのいわれあるワインを出発の日にいただいた。オリジナルの建築を改装し、一部増築した Le Papeは、5分ほどの距離にあるワイナリーHaut Baillyの系列。だからワイナリー見学を無料でさせてもらえた。どちらも建物も庭もプールも朝食も…ため息もののシャトーだった。友人曰く、この辺りには似たようなシャトーがたくさんあるんだそうで、色々と開拓していきたい夢が広がる。車がないと不便なんだけれども、現地の日本人/知り合いを頼ると言う手もあるわけで。

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シャトーの庭につながるテラス

その友人から、9月中旬のぶどう収穫体験ツアー企画を聞いた。帰ってきたばかりだけれどもまたボルドー旅行を夢想しています。まだまだボルドーとの縁は続きそう:-)

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今年は早く熟しそう