デンマークの国民学校(義務教育の小中学校)は、朝8時から12時半(早くて)、もしくは遅くて14:30に終わる。男女ともに働く社会デンマークには、そのあと学童が提供されていて、この学童(SFOと呼ばれる)は17時に終了する。デンマークの教育費は無料と言われるけれども、保育園や幼稚園やこのSFOは、教育の枠組みではないので、有料だ。だから通ってない子供もいる。
デザインドリブンから揺れ戻し
最近周囲のイノベーション関連組織(大学のインキュベーションやイノベーション推進組織)では、再度、理工系(STEM)分野への注目が集まっている印象を受ける。個人的な主観ではあるんだけれども、今まで私の周辺で見られていた「デザインシンキング」「今ある技術をいかに新しい組み合わせで提供するか」という、「デザインが全て(ま、技術は既存技術の組み合わせで行け!)」というアプローチから(いわゆるデザインコンサルってこんなアプローチ?)、古典回帰というか、「デザイン思考的なアプローチは重要だけれども、使い勝手なんかだけではなくて、ラディカルイノベーションによる新たな技術を作り出してなんぼ」。それが、国力に貢献する大きなイノベーションを創り出す源泉だ、という観点に変わりつつあるようなのだ。
デンマーク工科大学(DTU)は、STEMにフォーカスしたプログラムを地道に継続し、技術立国としての土台作りと底上げを狙ってるのは、以前にも何度か述べた(新産業を興すための仕組み)けれども、我がITUでも、社会学系の研究者は肩身が狭くなっている(実際、私はそうは思わないんだけれども。デザインは周辺で技術を支える重要な役割を持っているから。だから脇を固めるぐらいがちょうどいい。)というぐらい、大学の目標が新IT技術の創造に傾いている。スウェーデンのカロリンスカなどはライフサイエンスのエコシステムを強固なものに作り上げているし、米国や英国然りだ。
最近発表された米国の The demographics of innovation in the United States (feb, 2016)というITIFによる報告書も、STEMがイノベーションをもたらすこと、いかにイノベーションを促進するための手段を米国が維持できるか、という点が分析されていた。 直訳ではないけれども、面白いと思ったのは、おそらく執筆者の意見と一緒(流されてる?)、「学部中退者がイノベーションを成し遂げるという印象を昨今持つ人は多いだろうが、実際のデータを分析してみると、(STEM系イノベーターの)年齢の中央値は47歳で、仕事経験とSTEM分野における深い知見を保持している。イノベータは、高学歴であり、科学、技術分野におけるphdなどの高学位を取得している。」という点。
In high tech fields that require deep expertise, the average innovator in life science, materials science, and information technology is much older than the median age of the American work force.
ロケットサイエンスではダメで、地道にSTEM分野の研究者や実践者を育てることが不可欠なのだ、というメッセージなんではないかと思う。
ところで、日本は最近デザイン思考の話は良く聞くようになったけれど、「技術立国日本」の掛け声を聞かなくなってきたような気がする。一周遅れなのかな…。
良い写真ばかり使ってはいけない
コペンハーゲンビジネススクールのウェブ(CBS.DK)改良に関わっていた同僚に聞いた話。
最近、コペンハーゲンビジネススクールでは、ウェブサイトの改良を行ったのだが、写真の選定には非常に注意をはらったという。
ウェブに出てくる写真などは、一般的に素敵な選ばれし学生の写真が掲載される傾向にある。だが、実際に学生を呼び込む際には、キラキラ学生すぎる写真を掲載すると、自分とかけ離れすぎていると思われ、逆効果になってしまうのだそう。
そこで、CBS.DKに出てくる学生は、綺麗な服装の見目麗しい人ばかりでなく、普通の学生やちょっとヨレた服を着た学生なども登場している。
地に足のついたデンマーク社会ならではの傾向なんだろうか。
アジア人の見分け方
人は変わらないのか?
未来の図書館の姿?!
コーディネーションメカニズム
同僚のデンマーク人研究者は、大学の代表として地域の高校(デンマークの高校は基本的に公立)の執行役員(ボードメンバー)を務めている。これは、新興開発地区である大学の立地にも大きく関係しているのだろうが、地域に高校が新設されることに決まった時、IT大学から1人執行役員につくことが取り決められ、それ以降継続してポストが設けられ、大学の教員から選出されている。現在は2代目だ。
興味深いのは、こんな風にして地域で実施される中等教育に大学の知見がうまく活用されるための枠組みが整えられているということだ。よく、大学教育において、社会や企業ののニーズが酌み取られてないという批判がされ、学生の就職状況などが、デンマークの大学の人気ランクやひいては運営資金を左右する。だからこそ大学は、就職状況を気にするし、大学の執行役員には、産業連盟の重鎮が名前を載せてたりする。
今回知ったのは、高校レベルでも同じようなことが行われているということ。ITUは、デンマークでも珍しい新しい(99年)創立の、社会におけるIT活用に特化した研究を中心とする大学で、新しい組織だからこそスムーズにできる取り組みが数多く行われているように見える。地域の新設高校も新しい教育方法を取り入れていて、目指すところが似通っているということもある。ちなみに、この高校の新しい教育の取り組みについては、非常に面白いので、また別の機会に記録したい。
デンマーク社会の特徴として、組織縦断の連携を促進する努力が見られる。そして、それがうまく活用されている例を、電子政府の進展や大規模病院建築など、今まで多々見てきた。それだけでも興味深く思っていたけれど、うまく複雑な社会課題を解決するためには不可欠な多岐にわたるステークホルダーをコーディネートするためのメカニズムが、想像以上に社会の隅々にまで広がっているようなのだ。うーむ。。