ITUの研究者が、CIIDほか2大学と共同で取得した3年間のHorizen 2020 EUプロジェクトVIRT-EU | ETHOS;Ethics and the internet of Thingsのキックオフイベントが実施されて参加してきた。
このプロジェクトのそもそもの問題意識は、ITの研究において倫理観が問われる事柄が増えてきているという点にある。私は、あまり考えたことがない部分だったので、知らなかったのだけれども、例えばEUは、個人のプライバシについて、指針を出したりしているのだけれども、どれも後付けなんだだそうだ。何か問題が起こってからとか起こりそうになってから倫理問題を持ち出すんじゃなくて、課題を先取りしてどのような倫理観に基づいてITやイノベーションを進めていけたらいいのかということを考えるべきだと主張している。つまり先にどんな世界に住みたいかそこから指針を作っていこうということだ。
このプロジェクトは、イノベーションにおける倫理をテーマにしていて、
- IoT イノベーターがどのような倫理観に基づいて創造をしているのか
- プライバシに関する新しい枠組みを提案
- 倫理的指針を遵守するためのサポートツールを構築する
の3点がリサーチクエスチョンとして挙げられていた。
自分としてはわかりにくいテーマなのだけれども、一点例として挙げられていたことで非常に納得がいった点がある。それは、”多くの人は、データやプライバシについては、それほど積極的に考えてないし、言及しないし、何かアクションを起こしたりはしていないけれども、その帰結(Consequences)に関しては、反応する”という点だ。
もう一つ、自動運転の例が面白かった。自動運転で車に乗っていて危険に直面した時に、車が究極の判断を迫られるような事態が、今後生まれてくるだろう。その際に、自動運転車がどのような判断をするかは自動運転アルゴリズムに埋め込まれている創造者の倫理観に多いに左右されるんじゃないかという点だ。自動車は社会全体の最適を選択し、個人は自殺せざるを得なくなるかもしれない。
このプロジェクトの課題になるかもしれないこととして、一点気になったことがあった。メンバーの中に、IoT関連機器を作っている人はいなくて、外にインタビューにいくと言っている点だ。発表者のコメントの中に、”開発者が何か新しいシステムなりを開発するときには、みんな倫理指針を考えているよね?それを聞いていきたいと思う”なんてのがあったけれども、いや、多分何も考えてないのが大半じゃないかな・・・。