北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

合意形成型政治

f:id:jensens:20170423170450j:image政治に関しては、多少なりとも興味はあったのだけれども、ど素人であった私が、デンマークに来て政治に関心を持ったのには理由がある。中でも、デンマークの政治は透明性が高く、またプロセスが明確でとてもわかりやすいという点は、非常に大きい。

最近、事あるごとに目にしていたけれど、ようやく初めて手にとってみたイギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書)を読んで、興味深いと思った点があった。政治学をやっている人にとっては、常識なのかもしれないけれども、イギリスでは、サッチャー首相は、コンセンサス政治を終わらせた人物として知られているんだそうだ。

 「私はコンセンサスというものは、さほど重要なものであるとは思いません。あれは時間の浪費の原因のようなものですから」....コンセンサスを取るために議論を尽くしていたところで、結局それは組織を大きく変える「決断」に結びつきません。「決められない政治」や「決められない経営」を招くだけなのです。...イギリスで、サッチャーは、「コンセンサスポリティクス」を終わらせた人物として知られています。p.108

この「雇用対策やそのほかの社会保障の問題にとどまらず、マクロ経済政策まで組合や経済団体と話し合い、合意を形成していく」コンセンサス政治、私は、デンマークに来て初めて知った。多種多様な人たちの意見を聞き、解決策を模索する、なんて理想的な民主主義手法なんだと、感銘を受けていたのだけれども。デンマーク事情が見えてくるようになると、やはり合意形成にはとても時間がかかるし、意見は聞くけれども、結局、最後は政治家の判断や英断で決まるということも多々あることもわかってきた。デンマーク形合意形成のちょっとした限界も見えて来て、そんな限界にどう対処していくんだろうと薄々と考えていただけに、この「イギリスはもう新しい政治の形を導入していた!」ということに、ちょっとした衝撃。

結局、完全に意見を一致させることはほぼ不可能だし、相互理解も不可能だ。これを前提して、では、どう国を動かしていくんだ?どう決定を下していくんだ?ということを考えないといけないのではないかと思っている。