北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマークでの口頭試問の受け方

f:id:jensens:20160625050814j:imageデンマークを始めとした北欧の大学では、学部レベルから試験で口頭試問がある。授業の最終評価方法は多種多様で、レポート提出や選択肢式テスト、筆記テストばかりでなく、口頭試問や、持ち帰り試験(与えられた課題を指定の時間ないに解き提出する。24時間とか72時間とか...)などがあったりする。

私が今季担当していた「新規事業コンセプト開発」の授業では、口頭試問が最終試験として予定されていた。口頭試問といっても形は様々で、私が担当したものは、1ヶ月前に提出したグループレポートに基づき、個人で30分、口頭試問を受けるというものだ。30分といっても、内訳は、5分の発表、15分の討議、そして10分の2人の評価者同士での考査であるから、実質20分の発表と言っていいだろう。

日本の面接のように圧迫面接があるわけではない。また、気を逸らすものがあえて用意されているわけではない。自分たちが執筆したレポートの中で、自分の好きなトピックを選んで、5分間話すだけだ。ただ...このような口頭試問は、デンマークの学生はそれなりに慣れているのだろうが、日本の交換留学生にとってはかなり厳しい試験なのではないかと思う。不文律が多すぎるのだ。

第一に、ルールが明文化されていない。もちろん内訳や受け方は、事前に解説されることが多いが、どの程度準備していくべきか、最初の5分発表の内容をどのように選択したらいいのか、「習うより慣れろ」的な部分が多い。今回、私が担当していた授業には、交換留学生が数人いたのだが、彼らの評価は非常に低かった。担当試験官によると、「交換留学生はただ質問されるのを待っていた」んだそうだ。きちんと事前にデンマークの口頭試問について解説していたとは思えない。

第二に、センサーと呼ばれる外部評価者はかなりの曲者であることが(経験値でも)多い。センサーは、授業について理解している人ばかりではなく、もちろん個々の学生に関する理解にも限界がある。そのような学生の数ヶ月間の学習評価を、レポートと5分プラス15分のインタラクションで実施するわけだ。もちろん、この2人体制の評価は、担当教官が特定の学生を贔屓したり、逆に個人的な理由で低評価することを避けることはできるけれども、発表が苦手な人や緊張してしまいがちな学生にも、通常のレポートや授業態度やプロジェクトの関わりなどで情状酌量できず、予想外の低評価にならざるを得ない場合がある。

今回私が試験を担当したイダやニックはまさにそのような学生だった。いつも授業にも積極的に参画してグループを引っ張っていたイダと、授業には参加せずグループワークも理由をつけてはサボりグループのお荷物だったニックが同じ評価になってしまったのは、今思い返しても胃が痛くなる。イダは、緊張気味だった上に、センサーの専門分野に入り込んで墓穴を掘ってしまった一方で、ニックは、あえて言わせて貰えば、おしゃべりが上手だった。

デンマーク学術界の不文律で、「センサーの意見には逆らうな」というものがあるが、今回ばかりは、センサーを説得することかなわず、無念で仕方ない。センサーのイダの評価を一段上げることができたのは、不幸中の幸いだろうか。「かろうじてパス」の評価を下そうとしたセンサーに、どう対抗できたのだろうか、数日たった今でも後悔とぐるぐる考察が頭をよぎる。

そんな状況にならないように、(もしくは巻き返しを狙い「ニック」作戦でいく方も)日本人の学生でデンマークで口頭試問に臨む方は、是非ご一報ください。事前に色々とビシバシアドバイスはできますよ。