思いがけないお誘いを受けて、デンマークで日本のお琴を聞くことになった。コペンハーゲンのskuespilhusetで開催されていた「琴の響き」。今年は、日本デンマーク外交樹立150周年記念ということで、関連行事が目白押しだけれども、その一環として日本の皇太子がデンマーク訪問している。
日本の皇太子、デンマークの皇太子夫妻が来るので、ということで行くことにしたようなものだけれども、いやはや…、よかった。皇太子も素敵だったけれども、公演が面白かった!2日間の短い公演日程で、また聴きに行くことができないのが残念だけれども、日本に帰った時には、探して聴きに行こう!と思わされるぐらいよかった。しかもとても良い席で...ありがとうございます。
東京藝術大学教授萩岡松韻氏率いる11名の日本伝統音楽奏者のことを私は何も知らない。ただ、それぞれの奏者が個性にあふれていて、驚きの連続だった。琴の奏者深海さとみさんは、技巧が圧巻でまるでロックのようにまさしく技術で琴線に触れた。琴があんなに激しいものになりうるとは知らなかなった。盧慶順(No Kyeong Soon)さんの鼓のリズムと調子(っていうのかな)の取り方そして佇まいはため息ものだったし、三味線のバチさばきもかつてはエンターテイメントであった日本芸能真髄を見せられた気がする。田中奈央一さんの箏も姿勢からして素敵で、三絃や唄もこなすマルチタレントぶりは圧巻。異なる流派の尺八奏者二人(友常毘山、青木彰時)が参加したというのも、面白かった。吹き方や雰囲気が違ったので、それが流派の違いと言うことなんだろうか(もちろんよく知らない)。
女性の琴奏者がカミソリの刃のようなシャープな演奏でともすればピリピリとした雰囲気を醸し出す一方で、萩岡氏は皇太子も臨席するこの機会を存分に楽しんでいるようだった。萩岡氏の芸術家としての側面をもっと見て見たくなったし、こういう芸術家を教授とする藝大(だって大学だよね?!)にも興味が湧いた。20年代やそのまた昔、また80年代に作曲されたモダンな演奏もあり、演奏家のスキルも手伝って、すっかり日本伝統音楽のイメージが変わった。
今回感銘を受けたのは、外国で日本芸能に逢うといったような感傷的な気持ちからではないと思う。ちょっと大人になったから見えて来るものが、見えて来たのかな、そんな気がしている。