北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

『ユーロビジョン歌合戦』を薦める理由

Netflixのお馬鹿映画、『ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語〜』(Eurovision Song Contest: The Story of Fire Saga)が面白かった。

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ユーロビジョン・コンテストは、1956年から欧州で開催されているソングコンテストで、国の代表者がコンテストに参加し、国同士の戦いが繰り広げられる。かつてABBAが参加していたことで、私も名前だけは知っていた。北欧に住んでいて一度もきちんと見たことがなかったのは、一度見たときに、デーモンなんかが出てきたりして、なんだか仮装コンテストみたいなこと、めちゃくちゃ舞台が派手で食傷気味になってしまったから。

でも、この映画は面白かった。ユーロビジョンが好きな人も楽しめると思う。

舞台はアイスランドの田舎町。ユーロビジョンコンテストに出場を夢ている「ファイヤー・サーガ」のラースは、両思いだけれども一歩進めないシグリットと一緒に、ユーロビジョンコンテストに出場できることになる。どうしようもないラースのパパがピアース・ブロスナンだったり、ド派手なロシア代表がセクシーすぎたり、美男美女がたくさん出てくる映画で、ちょっとした息抜きにぴったりだ。そして、要所要所にとても北欧っぽい雰囲気にあふれている(米国映画だけれども)。

ここからちょっとネタバレ。

 出場できることになる経緯が、アイスランドが勝利する次回の開催国となってしまうので、それが困ると考えるトップによってラース以外の候補者が全員爆破され、残った「ファイヤー・サーガ」にお鉢が回ってきちゃうとか、アイスランド(というか北欧全般)に生息するエルフが貢物を捧げるラースとシグリットを助けるべく、偉い人を殺害しちゃうとか...。あくまでも純粋・純朴なアイスランド人(皮肉に気づけない、アピールに気づけない)とちょっとシニカルな国々や戦略的なロシア人との会話も、「あぁ、北欧人ならありそう....」と思ってしまう。

それだけじゃない、面白いちょっとクスッと笑ってしまう点がいくつも埋め込まれていた。

一番気になったのは、セクシーロシア代表のレムトフとシグリットの会話。シグリットが「あなた、ゲイなの?」と聞くと、レムトフが答える「ロシアには、ゲイはいない」。シグリットは重ねていう「でも、人口の10%はゲイなのに、ロシアにいないなんておかしいわ」(記憶から引用しているので実際はセリフは違うと思いますがあしからず)。この、LGBTが一定数いるのが当然と考えているアイスランド人たちと、ゲイを認めないロシアの話の噛み合わなさ。

ラースが、米国人の若者に何度も「馬鹿な米国人」「お前たち来るな!」と繰り返すシーンも、笑い転げてしまった。これらのセリフからは、米国の金融危機が波及してアイスランドが窮地に立たされたことを思い返させられる。

真面目な政治的な話題を笑いにして考えさせつつ、でも全体的にはお馬鹿で、楽しめる。週末の映画にぴったり。