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北欧生活研究所

北欧在住11年。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

デンマークのIoTのポテンシャルが高いと思うのは

f:id:jensens:20160828215108j:image最近複数の人からデンマークのIoTやビックデータ、AIなどのIT事情について質問を受ける。電子政府進展などの影響もあって、北欧は進んでいるんじゃないかと思われるようなんだけれども、インダストリ4.0や日本のIoTの状況、また色々な情報を聞いていると、現段階では、北欧で特に目立った成果が上がっているわけではないように思う。

ただ、ポテンシャルとして北欧で様々なサービス(特に公共系で)が花開く可能性は多いにあるんじゃないかと思うのだ。

理由はいくつかある。

1. センサーなどを活用するIoTにおいて、重要になってくるのがプライバシーと利便性の関係、そして信頼(Trust)であるが、北欧人にとって意外と簡単に越えられる課題かもしれない。

このIoTの議論は、電子政府の議論に非常によく似ている。個人番号を導入し、電子政府を機能させようとなったときに、政府の透明性が高く、信頼性が高いことが、北欧においては優位に働いたと言われる。もちろん、プライバシーの懸念はないわけではなけれども、個人番号で可能になった便利なサービスや書類処理の簡略化は確実に利便性を高めたし、プライバシーvs利便性の争いは、ひとまずデンマークでは利便性が勝った。これはひとえに「政府は悪いことにつかわない」といったような政府の信頼性が高いことが、前提となっているんだろう。プライバシーが阻害されず、便利であれば、データを扱う者の信頼性が確保されていることで、利用が進むという良い例だ。

2. 社会性主導であり技術主導でないこと

技術が優れていても使い勝手が悪かったり、特にニーズが感じられなければ、あえて新しいサービスや製品を使うことがないだろう。単なるテクギークだけではなくて、一般の人が使うには、その使い勝手やデザイン性が重要で、その点、デンマークでは、ニーズベースで進められるケースが多く、また使い勝手を良くすることに関してはピカイチだ。There is a need for not just the technology but also the insigths and what makes technology relevant to [the life]. [1]

3. 福祉国家の枠組みと親和性が高い

IoT分野で、個人情報のデータ収集をしようという場合、消費者がデータを積極的に提供するかどうかが鍵になる。前述の信頼や利便性、プライバシの確保などが障害となることが多いのだが、福祉国家北欧では、米国や日本と異なり、かなり優位な社会状況にあると言えそうだ。デンマークの医療福祉分野で考えてみると次のようなよいサイクルが発生しやすそうだ。

 

*1

4. ネットワークやデータベースなどの次世代ITのためのインフラがすでにある。

電子政府指数は高いし、速度は遅いとはいえネットワークインフラも整っている。個人番号は68年からあり、社会分野(医療、教育、税、社会保障)の個人データがすでに40年分ぐらい蓄積されている。

5. ITリテラシーが高い

今70歳代ぐらいの方たちぐらいの時代から、デンマークでは男女共にオフィスでタイプライター、PCが使われていて、基本タイピングができ、コンピュータ機器に慣れている人が多い。小学生は単にスマホでゲームをするだけでなく、多くのソフト(PPT、ワードはもちろん、画像処理やデザイン系ソフトなどを使える小学生も多い。授業で調査やプレゼンなどをするからだろうか)やアプリを使いこなす。ほぼすべての国民がIT活用でき、その利用スキルもかなり高い。

6. IT関連の技術やサービスの浸透が早い。

すでに、OECD諸国の中で、人口100人あたりのデバイス数は韓国に次ぎ2位(OECD-Digital Cnonomic Outlook 2015, p259)だとか、スマホの浸透率が欧州諸国の中でも伸び率が高く今後も牽引をつづけるだろうとか、デンマークにとっては、望ましい状況が予測されている。

特に、デンマークにおけるIoTの注目分野とされる医療・健康・保健に関してのデータ、つまり個人の運動やバイタルデータは、意外と皆、抵抗感なく収集されるようになるんじゃないかと言われている。医療に関しては、前述のように国が主導で収集するだろうし、どうやら欧州でもっともスポーツ好きの国民の一位はスウェーデン、そして2位にデンマークと評価されているらしく、運動量のトラッキングなどは、iWatchなんかが出る前からかなり人気があった。

ちなみに、最近読んだ中では、このレポート(Copenhagen Healthcare Cluster and TENDENS, Communicating with users about self-monitoring healthcare)が、面白かった。世界的な傾向に触れつつも、デンマーク独自の特徴なども分析している。その上で、デンマークはよいICTやIoTのテストベッドになるだろうと結論付けている。

*1:

医療が無料である→全体の医療システム向上のインセンティブを市民が持っている→情報シェアを積極的に行う→個人データがビックデータとなり医療関連の研究が進む。