いろんな知見を持った人が集まり一緒になって課題解決に取り組むということ(利害関係者間の協調作業/コラボレーション)が、非常に得意な北欧の人たち。利害が必ずしも完全に一致しない場合でも、議論をしつつ解決策を見つけていく。毎日の生活の中でそんな姿に感嘆させられることも多いが、このようなコラボの方策は、一朝一夕に出来上がったものではない。
2015年NRK(ノルウェーテレビ局)製作のKampen om tungtvannet (重水の闘い)は、ノルウェーテレビ局のテレビドラマ作品だ。第二次世界大戦中、イギリス軍とノルウェー人(イギリス軍に合流)が協力し、ノルウェーのテレマーク地方にあったヒュドロ重水工場の破壊工作を進めた一連の作戦をドラマ化したもの。
すでにナチスドイツの占領下にあったノルウェーにおいて、核兵器の開発に利用できる重水を作り出していた工場を、ノルウェー人部隊が乗り込んで破壊し、ドイツの原子爆弾開発計画を阻止するというプロット。これは実話で、破壊工作作戦に関わっていた人たちのなかには、まだ生きている人もいる。物語は、戦略を指揮していたノルウェー人大学教授ライフさん(Leif Tronstad)の視点で語られるが、彼ばかりでなく多数のノルウェー人が対ナチスに加わるためにイギリスに向かい、イギリス軍と作戦を共に実施していく。
物語に夢中になって見落としがちなるが、ここには北欧の人たちの小国としての生き様というか、小国に生まれたものとして獲得してきたのであろうスキルがいかんなく発揮される良い例のように思える。
一部のエリートだったのかもしれないけれども作戦に参加しているノルウェー人たちは複数言語を操る。そして、軍隊や占領下においての異文化への対応も小国ならではだろうか。
破壊工作プロジェクトでは、当然のように英語を共通語として戦略が練られる。ノルウェー人出奔者は、英語で議論し、さも普通のことのように、異なる文化やプロセスや価値観で動いているだろう他国の軍隊と一緒に戦略を練るのだ。
同様にナチスドイツの支配下に置かれていた工場は、ドイツ軍の配下で重水製造を続けるが、マネージャーのノルウェー人は、ドイツ語を話し、(心情は別として)工場と雇用者のサバイバルのためにドイツの論理に従い、協調していく。
他国と協調していくことがデフォルトで求められていた欧州地域。一方で、イギリス軍に下るのではなく、またノルウェー国内に地下組織を作るのではなく、イギリス軍の力を借りて、祖国の知見を生かし、作戦を展開していく。ノルウェー人でないと考えられなかった作戦をひねり出し、主導権を握ったのは、ノルウェー人たちだ。
写真はもちろん関係ないんだけれども、デンマークで偶然出会ったノルウェー独立記念パレード