北欧に住んではや12年。周囲の被害を折に触れ聞きながらも自分自身は一度も窃盗・すりにあったことがことがなかった。正確には、スリとお話ししたことはあるのだけれども(その話はまた別の機会に)、実際にカードや身の回りのものを無くしたことはなく、話を聞いても同情はしたものの、他人事のように聞いていたと思う。
初めての窃盗体験は、ショッピングストリートであるKongens Nytorv。日本人がよくパスポートや現金を取られるばかりでなく、デンマーク人がお財布をすられたりもする場所で、知り合いでも多くの人が被害を受けている。
私の場合は、駅で友人に会い、iphoneの音楽を止めてイヤフォンを抜き、お店に行くまでのわずか15分ほどの間に、カードケースと一緒になっていたiphoneが取られてしまった。ポケットにいつも通りに入れ、チャックもしまっていたのに、気がついたらなかった。どんな隙があったのか、今でも全くわからない。
今回すられたのは、iphoneと6枚のカード類。物をなくすのは、何にせよ決していい体験ではないんだけれども、携帯のデータは全てクラウドバックアップしてあるからいいとして、iphoneケースに入れておいた娘からの手紙や大吉おみくじが痛い。そしてカード類が痛すぎた。
銀行カード3枚:キャッシュレス化が進んでいるデンマークだから、現金の持ち合わせが全くない。家にも現金がない。銀行カードを止めるのは、簡単に済んだ。遺失で再発行してもらうのも電話一本で済んだ(とはいえ、電話が取られ、固定電話はないので、知り合いに電話を借りた)。ただ、再発行に8日かかるというので、久しぶりに現金を持って日々を過ごしている。
免許証:再発行してもらうには、多分眼科検診が必要・・・。おそらく今の健康状態では再発行してもらえなさそう。
スイカのような交通カードRejsekort: 公共交通機関の支払いも全てトラベルカードに統一されているから、帰宅するのにも困った。免許証もないので運転もできない。
そして居住許可証:このカードの再発行が何よりも手間がかかった。ちょうどクリスマス休暇の時期。国外に出る予定があるから、居住許可証がないと再入国できなくなってしまう。
今回の件で感じたのは、街の安全度の重要性だ。今回の件は、自分で用心していても避けようのなかったことだと思っていて、同じようなことが起きないようにするには、カード類をバラバラにカバンやポケットに入れておく、腹巻に隠すなどの対処が必要になる。つまり、カバンのチャックを閉めましょうとか、すぐに落ちてしまうジーンズのポケットに入れるのはやめましょうとかそのレベルではなく、利便性がかなり制限されるような対応をとらなくてはいけないわけだ。
以前スリとお話しした時に、全くカバンに触られたことを悟られずにチャックを開けて取れてしまうそのスキルを見せてもらって唖然としたことを覚えている。一度狙われたら逃げられないということを考えると、何が対策になるかって、個人としては利便性を制限してでもいつでも対処を怠らないしかない。だけれども、それよりも何よりも大切なのは、社会や街をより安全にすることなのではないか。
避けようもないことが起こりうる、しかも、お財布が無くなっても誰も戻ってくると思ってない。こんな社会環境が許されている街は、安全を感じる生活環境とは言えない。これってとても残念なことだ。