北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

Kokkeriet:美味しい食事

ミシュランにリストされるKokkeriet星一つの常連だ。今回、北欧在住そろそろ13年目にしてようやく訪問した。今まで行けてなかったのはなぜだろう。New Nordic Foodと言われているけれども、他の店ほど目新しさもなく、提供される料理もあまり特徴を感じられなくて、惹かれなかったのがいちばんの要因だと思う。たまたま一人分(!)のディナーチケットがあったので、もう一人分出していくもの悪くないと思って、2人で行ってきた。

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店に通されたのは、午後18:00。夏も始まりかけで、外はまだ昼間のように明るい。夏の夕食は遅くなる傾向のあるデンマークだからか、18時でも、一番乗りだった。シャンパンとスパークリングウォーターを注文後、この手のNew Nordic Foodにありがちなフィンガーフード5種類から始まり、ペアリングのワインが付いているコースメニュー。

5種のフィンガーフード :

f:id:jensens:20170724233205j:imageチキン、コーン、ハーブ 

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菊芋、カールヨハンと karse。どれも、地元の食材。味が濃くて、一つ一つの味付けがシッカリしている。この時期にカールヨハンがあるということは、はしり?だったのだろうか。

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お芋のタルト、チーズとお花

タラ、赤ビーツに、ケッパー(サンドイッチになっていて、間にタラが挟まっている)

f:id:jensens:20170522181329j:plain牛の骨油にBBQしたベリーGran

f:id:jensens:20170522181708j:plain1皿目:アミューズ・ブロッシェ: ポーチドエッグ、スモークニシンにラディッシュ

 

f:id:jensens:20170522184017j:plain2皿目:セロリ、りんご、若グリンピースにワイン2012 Arrowood, Saralee´s Vineyard, Russian River Valley。これが一番印象に残っている。え?これで一皿?と思った最初の驚きに加え、一つ一つの素材の味がとても良い上に、美しい。セロリと言っても、苦い風味は消えてなく、全体としてもまとまっているし、個々の素材も際立っていた。

3皿目:ホタテ貝、小さなキャベツ、ベラベーナ ワイン: 2007 Champagne Blanc de Blancs, Delamotte, Le Mesnil。あえて言うならば、ソースの味が格別。帆立貝の風味がうまく引き出されていて、ソースが命!のフランス料理の影響を感じる。

f:id:jensens:20170724233323j:imagef:id:jensens:20170522191505j:plain4皿目:Klipfisk, kartoffel og sennep ワイン: 2014 Sauvignon blanc, Klein Constantia, Constantia

f:id:jensens:20170522193107j:plainf:id:jensens:20170522195603j:plain5皿目:赤ビーツ、クリーウ、トリュフ、ワイン: 2000 Gevre-Chambertin 1. Cru, Maison Roche de Bellene

f:id:jensens:20170726010316j:image6皿目:鴨肉、スモークのうなぎ、かぼちゃと、オレンジ ワイン: 2012, Barbera d´Asti, Renato Ratti

f:id:jensens:20170522210617j:plain7皿目デザート:きゅうり, ホワイトチョコレート、ミント、フェンネルメレンゲ ワイン: 2014 Rieslaner Auslese, Weingut Philipp Kuhn, Pfalz。きゅうりのシャーベットが意外に美味しくて、さっぱりとした味付けが優しい。きゅうりをシャーベットにしてそれをメインのデザートにしてしまうってすごい。

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フィンガーフードからコース料理を食べ終わる頃は、すでに23時すぎ。食事をし終わったのが21時ごろで、そこからチーズを勧められ、そのあと、延々とアイドリング時間があった。22時ごろになってようやく締めデザートが到着、そのあとも3つほどデザートが続き、最終的に店を出たのは24時近かった。早く帰りたいと始めから言っておいた(子供が待っているので、22時には遅くとも店を出たい旨、18:30に店に到着した時に伝えている)にもかかわらず、店を出られたのはかなり遅かった。

最近デンマークのこの手の高級料理屋に行くと、サービスってなんだろうと考えさせられる。一方的に「驚け!」と提供されるサービスにいかにも驚いたふりをするプレイをすることが要求されている気分だ。最近、New Nordic Foodは皆画一化され、さらにタチが悪いことに、星がある店ほど「私達すごいんです」を押し付けてくる。まだまだ終わりじゃないよ、お食事まだまだ続くよ...。でも、もういらん!と言いたくなってくる。

サービスは闘争である、という言質があるが、まさにその闘争が欠けているのを感じる。ある種の暗黙のルールがあり、そのルールに則って料理人とゲストは、緊張感のあるゲームをする。そのゲームを楽しみに行っているのに、提供側の自己満足を押し付けられているだけに感じるのは、私一人なのだろうか。提供側の「顧客は、大枚はたいて食事に来ているのだから、それに見合うだけのボリュームと時間をかけ楽しませるべきだ」という感覚があるのか(この話をした時に知り合いに言われた)、私にはよくわからない。

さすがに食事で5時間は長すぎだ。いや、5時間でも楽しんだこともあるから別に長さは最終的には問題ではなくなるんだろう。その長さの食事を提供する気概があるのであれば、テンポもトータルバランスも必要だろうにも関わらず、その期待は満たされなかったし、期待を裏切られてばかりだった。私の好きな同様の高級かもしれない料理店では、顧客との対話も楽しんでくれるし、様々な驚き(キッチンに案内したり、庭に案内したり...)を持って、結果的に長時間の食事時間を短く感じさせたり、長く座っていてもその長さを感じさせない椅子の形や素材や、照明などにちょっとした工夫がされ、場所作りに余念がない。Kokkerietは、緊張感や非日常感がなく驚きもなく、そして、椅子も硬すぎて最後の2時間は拷問に感じた。トイレに立つ一瞬のあの開放感!私にとっては期待はずれなレストランだったが...、ふむ。私が見えてない可能性もあることは、認めておこう。