北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

皆でつくる社会

 

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首相:「これまでの間の国民の皆さんの御協力に感謝申し上げますとともに、全ての地域で緊急事態宣言を終えることができず、誠に申し訳なく思っております。...自治体と協力し、医療体制の確保も全力で行います。引き続き制約の多い生活で御苦労をおかけいたしますが、今一度皆様の御協力をお願いいたします。。。。   新型コロナウイルスの発生から1年以上たちました。我が国でも、世界でも、なおウイルスとの闘いは続いています。私も、日々悩み考えながら走っております。国民の皆さんの不安を少しでも解消するために、あらゆる方策を尽くし、私の全ての力を注いで取り組んでまいります。今一度の御協力を国民の皆さんにお願いを申し上げます。私からは以上です。」(首相官邸より引用)

毎回、首相スピーチや記者会見でぞわぞわっと広がる違和感はなんだろうと考えていた。うまい説明の仕方をまだ見つけられていないのだけれども、一つ明らかに言えるのは、政府側の「対応ができてないことへの謝罪とお願い」、記者や市民側からの「対応ができてない政治への非難」という、与える側と受ける側に分かれた対立図式が、当然のことのように受け取られていることだ。そして、これは、私が生活するデンマークで見られる政治家と市民の関係性と、根本的に異なる。

これは、まるで、勘違いした親子関係に似ている。親も子供も「親は子供の面倒を見ることが当然」と考えていて(まぁそれは誤ってないけれども)、子供は「面倒を見てくれない親を非難して当然」と思っていることだ。我が家でも子供との会話でよくあることだ。20時すぎてベッドに入っていない息子に、「もう8時である」と叱ると、歯を磨いてくれないから寝てないのだと主張する。子供は自分で歯を磨こうともしないのに、意見だけは一丁前だ。

 

類似の内容を以前にブログで書いたことがあるのだが、その一部を引用したい。

「一人一人が、社会と国を支える一人として、自分ごととして、政治を考えること、自分が社会のために国のために、何をすべきで何が貢献できるかということを考えるという民主主義の基礎」がある。

これは、ケネディの有名なスピーチ「My fellow Americans, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.」にも述べられていることだ。

jensens.hatenablog.com

政治家は、市民の代表として自分たち市民の声を代弁して国の舵取りをする役割であることに違いないのだが、これは、私たち市民がすべてを「代議士先生におまかせ」するという意味ではない。私たち市民がしなくてはならないのは、政治家の仕事を支えるために建設的な提案したり、意見したり、アクションを起こしたりすることであって、政治家を非難することではない(時には必要だが)。政治家の国の舵取りがうまくいかないとすれば、その政治家を選んだ私たち市民の失敗でもある。

同時に、政治家がするべきことは、謝罪とかお願いではなくて(時には必要だが)、国の適切な運営であり、リーダーシップであり、未来を描くことだ。そして、市民がきちんと判断し義務を果たせるように透明性を確保し、プロセスを可視化し、エビデンスをわかりやすく示すことだ。データや現状分析や戦略などの情報を提供し、市民一人一人が一丸となって行動し政治を支えるようにすることとなんじゃないかと思うのだ。

何が言いたいのかというと、謝る前にするべきことがあるだろう、ということ。もっと具体的に言えば、「申し訳なく思う」と言ってもいいけれども、感情は横に置いて、まずコロナ対策がうまくいくように政府が積極的に取り組むべきなのは、今までどうしてきたか(過去)その結果今の状況がどうなっているか(現在)だからどうしていきたいのか(未来)、と、適切な情報を透明性を持ってわかりやすく伝え、向かう道を示すことだ。曖昧な言葉で終わりにせずに、具体的な証左やリーダーシップや方策を示すことだと思う。

本日、ロフトワークスさんの「コモンズを民主化する ヨーロッパの公共サービスはなぜ再公営化されたのか?」を聴講していて、気付かされたことがたくさんあった。(いやー、とても良いセッションだった。オンラインで日本の議論が聞きやすくなったのは、コロナの恩恵だな。)棚橋さんが「義務を負う人による自治が民主主義である」と言っていて、上手い言い方だなと嬉しくなった。林篤志さん(コモンズラボ)の活動は、日本でたくさんの人がアクションを起こしている!ことが見事に可視化されていた。

政治家は確かにだらしないから批判したいし、色々と不透明すぎて判断材料が乏しいが、政治家のせいにだけしていないで市民が動く時期にきている。おまかせじゃなくて動くことだ。