北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

ブレケル・オスカル

f:id:jensens:20170608224659j:imageオスカルと知り合ったのは、北欧に住み始めた直後のことだから、すでに12年ほど前になるだろうか。南スウェーデン、マルメに古くからあるお茶屋さんで紅茶を売っていたオスカル君に日本語で話しかけられたのが始めだったように記憶している。

紅茶が好きだと言っていたオスカル君が、いつのまにか日本茶(煎茶)の勉強をするために静岡に行き、資格を取得し、「日本茶の伝道師」としてメディアに出てくるようになっていた。久しぶりに会ったオスカル君は、流暢な日本語で丁寧語を使いこなし、日本茶をほとばしる情熱で熱く語る青年になっていた。

私は、今までお茶についてはよく知らず、何よりも煎茶を意識してみたことがなかったので、目から鱗の話が満載だった。外からの刺激によって改めて自分の立ち位置を確認することはよくあることだけれども、当たり前のように思える水とお茶の関係や、湯の温度によって味わいが変わること、日本のお茶(煎茶)の状況なども、改めて考えさせられた。

久しぶりの再会を楽しみながらも、私の頭の中では、いろいろな疑問が渦巻いていた。オスカルのお茶にかける情熱はどこから来ているのだろうか?どうしてそこまで惚れ込み、全身全霊で取り組めるのだろうか?これだけの情熱をかけて、日本茶の魅力を紹介できる人材に、日本のお茶産業は応えているだろうか。日本は、通常の日本人以上に煎茶を理解し、複数の言語で日本発のお茶の魅力を語ることができるこの稀有な人材を活かしきれているのだろうか。

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意識変容

f:id:jensens:20170603153031j:image文化というのは、気がつかないうちに肌を透過し、体の隙間から少しずつ滑り込んでくる。自分も気がつかないうちに、変化は自分の一部になる。意識変容は、とある瞬間やとある時に起こるといったものではなくて、時間をかけてゆっくりと、本人が認識するまもなく忍び込んでくるものだと思う。多くの場合、自分の変化には気づかない。自分の意識が変わったということは、何らかのタイミングでブレークダウンが発生することで認識することになる。

最近、日本に1週間出張に行き、2人の子供をデンマークに置いてきた。日本には頻繁(年に数回)に、短期間だけれども戻っているので、それなりに日本の状況には通じているつもりだが、それでも「言い回し」「流行りの言葉」「考え方」などは、フォローアップできないことが多い。そして、今回、相手に言われて戸惑ったセリフの一つがこれだ。

相手「今回はどれぐらい滞在しているんですか?」
私「一週間ぐらいです」
相手「あ、お子さんは連れて来ているんですか?」
私 「いいえ、旦那が見ています」
相手「….えぇ?!…旦那さん、すごいですね」

一人だけでなく複数人としたこの会話。相手には、子供がいる方もいて、しかも頻繁に出張をしている方もいる。私の旦那も一週間程の出張は普通にするし、おそらく「相手」も長期出張される方も多いように見受けられる。「旦那さんすごいですね」という反応に「私もすごいです。」と言いたいのをぐっとこらえた。「私もすごいです、そしておそらく皆さんの奥さんもすごいです」と即時に言えなかった自分を反省している今日この頃。一週間1人で子育てをするのが大変なのは女性でも変わらないし、働いていれば特に、だ。

旦那にとって、一週間私がいないことによる負担は、通常私がする事項「お迎え」や「夕食の支度」などを自分がすることになること、話し相手がいないこと(本人談)。ただ私が出張から帰宅するとやはり洗濯は山積みで、部屋は(私が気になる部分が特に)掃除されてないことが多い。だから、帰宅後の私の負担は増加する。旦那の出張で、私が大変なのは、小さなサポート(ゴミ捨てやら、食器の片付けやら、子供対応やら)がなくなり、それをカバーするための日常の雑務で日々が過ぎてしまい、クオリティタイムの余裕がなくなること。日々に彩りを与える余裕がなくなることだ。

最近、多くの日本の友人(男性)も、子育てをしているようで、FBや言葉の端々から、日本の子育て環境も変わっていると感じていた。だからこそ、気がつかないうちに、デンマークと同じような反応を期待していたんだと思う。まず、そこから。ここから。

20代へ

20代から35歳ぐらいまでの間は人生においてとても重要な時期である。人生が長くなった現代においても、重要な時期であることには変わりない。3歳までのアタッチメントや家族との繋がり、遊びが大切だと言われるのと同じように、成人の人生にも大切な時期がある。それが20代の時期で、この時期に人生の基盤(物理的基盤:どこに住むか、パートナや家族:誰と人生を過ごすか、仕事:何をするか)を整えておかないと後で取り返しがつかないことも多く、挽回できたとしても何十倍もの苦労が伴うことになる。

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自転車ハイウェイ用のアプリを使ってみた

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とある記事で52日にコペンハーゲン首都圏エリアの13市にまたがる5ルート115Kmのスーパー・ハイウェイ(高速道路)が開通したことが報道されていた(関連記事自転車用高速道路がある国 デンマークの「人を幸せにする仕組み」4 | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス])。そういえば気が付いたらいつのまにか自転車ハイウェイのロゴや、コペンハーゲンの主要ランドマークへの距離や方角を示した標識が自転車道に設置されていて、コペンハーゲンの自転車ハイウェイ計画は順調に進んでいるんだなと思っていた矢先のことだった。

記事を読んだ時に知った首都圏レギオンが出しているCycle Planenという道路検索アプリの存在を知って早速マイiPhoneにダウンロード(無料)、片道10キロの自宅から職場までのルートを自転車で行くことにした。

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合意形成型政治

f:id:jensens:20170423170450j:image政治に関しては、多少なりとも興味はあったのだけれども、ど素人であった私が、デンマークに来て政治に関心を持ったのには理由がある。中でも、デンマークの政治は透明性が高く、またプロセスが明確でとてもわかりやすいという点は、非常に大きい。

最近、事あるごとに目にしていたけれど、ようやく初めて手にとってみたイギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書)を読んで、興味深いと思った点があった。政治学をやっている人にとっては、常識なのかもしれないけれども、イギリスでは、サッチャー首相は、コンセンサス政治を終わらせた人物として知られているんだそうだ。

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メキシコの漁師は広い世界を知らない

Kamihiraさんが「メキシコの漁師」の話について面白い考察をしていた。

kmhr.hatenablog.com

このメキシコの漁師の話は、ググればいくつかのバージョンが出てくると思うので、気になったら見て見てほしいのだけれども、環境は変わるからこそ、単なる漁師では、現状維持も難しい、という視点だ。

物語のメッセージは違うんだけれども、はじめにこの話を読んだ時から、この物語のおかげで、おそらく物語が一番批判したかった生き方を肯定できるようになった。今は、私は、生き方や生きる姿勢の違いについて言っている話と捉えている。

もし、結果が同じなんだったら、私はいろんな経験したいと思う。人が楽しめる(充実している/やりがいを感じる)方法やコトはおそらくかなり違うので、どちらがいいかとは言えない。私は、全く違う世界をたくさん見てきた旅行者になりたい。

私は、高校生までいわゆる自分の環境に満足して、自分の心地いいコミュニティの中にいた漁師だけれども、ある時旅人の生活を選んだ。現在は、母国を離れて海外に住み、毎日の生活で両親に会うことはない。日本にいるときは、朝起きると親がそこにいてとりとめなく話せる幸せみたいなことは、一緒に住んでいたらあまり考えなかった感情でもある。心地いいコミュニティを離れることで見えることがあるし、再び戻ることがあれば、きっとその間に得てきた経験も役立つようになると思っている。

海外に出るデンマーク人は多く、皆、「デンマークはいい国だ」と言ってデンマーク愛を高めて帰国する。

現状維持の方が恐ろしい。

 

日本とデンマークの「サービスデザイン」

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IAIS |一般社団法人 行政情報システム研究所より、20172月号行政情報システムを受領しました。ありがとうございます。少し時期遅れですが、日本に送付いただいていたので、今になってようやく拝読しました。

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