日本とデンマークの「サービスデザイン」
IAIS |一般社団法人 行政情報システム研究所より、2017年2月号行政情報システムを受領しました。ありがとうございます。少し時期遅れですが、日本に送付いただいていたので、今になってようやく拝読しました。
2017年2月号の特集は「サービスデザイン」。サービスデザインの公共、サービスデザインの進め方、行政による実践事例などが掲載されています。トップバッターは、慶應義塾の武山先生。サービスデザインの成り立ちや、サービスデザインってそもそもどういう考え方なんだろうということがわかりやすく解説されています。
ドイツやイタリアの大学において、デザインの専門領域として、サービスデザインの教育や研究が本格的に始まることとなる…サービスは無形の財ではなく、「ある主体がみづからの持つ能力を資源としてたの主体(または自己)のために用いること」…価値は、他者から提供されるなんらかの物事に備わっているものではなく、それらが利用されることを通じて、利用者とそれらの提供物を授ける主体によって競争されるものとして理解される。…提供物やそのプロバイダーを中心に据えた事業の発想に転換をもたらす…利用者を含む様々な主体が分散的に持っているたような資源を組み合わせることで、利用者(及びその他の主体)にとって望ましいアウトカムが達成されるように事業を(再)構築していく発想…
デンマークの行政のホームページや情報デザインを受託していて、日本にも最近進出したコントラプンクトへのインタビューや投稿記事など、デンマークのサービスデザイン情報が満載。
公共機関のWebサイトは…実現するためには、様々なターゲットに対してユーザテストを行うことが必要になってきますし、既存のデザインメソッドでは対応できないので、サービスデザインの考え方が有効になるのです(p.23)。...訪問してくれたユーザが心地よさを感じ、長く、そして何度も訪れてくれるようなものを作る必要がありました。シンプルだけれどリッチなコンテンツがあるもの、それを生み出すにはコアなものが見えてくるまでデザインを削っていく作業が必要だと思っています(p.24)。
また、日本の行政機関へのアドバイスもとても示唆に富む。
自分たちの発信したいことだけを発信するのではなく、周りにいる消費者やユーザの声をまず聞くということから始めてみてください…デンマークのデザインが日本の参考になることはたくさんあると思います。これは余談ですが、アメリカやイギリスのデザインというのは、自分たちのスタイルを提唱する方法です。「どう?僕たちのデザインって素敵でしょう?」といった具合に。しかしデンマークは日本と同じく謙虚な国民性で、かつ日本に対する理解も深い国ですので、共に考えて生み出すことができると思っています(p.25)
デンマークの事例も含め、特に日本の公共におけるサービスデザインを考える上で、参考になることが山ほどある。
例えば、コントラプンクトがデンマーク外務省のホームページで採用したモバイルファーストの考え方は日本にも参考になるんじゃないだろうか。今後情報アクセスの大半が、モバイル機器からになると考えられているようで、それならば、モバイルでの見え方ということを第一に考えて、情報デザインをしていこうということだ。これは、現在受け持っている授業Concept Development with Industryで学生たちが提案したアプリにも反映されているコンセプトで、多様な論文や調査にもサポートされている知見だ。この話を読んで、学生たちの発表を思い出した。