北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

差別意識はどこから生まれるか

女性リーダたちの話は結構好きで、サンドバーグさんのLean Inも読んだし、ヒラリー・クリントンも、そして勝間さんも話題になっていた時に読んだし、津田梅子なんかからも影響を受けた。その後も、折に触れ本を読んだり、ドキュメンタリーをみたりしている。このコロナ影響下で、色々とドキュメンタリーをみたけれども、女性関連の映画やドキュメンタリも色々とみた。その中で見たミシェル・オバマのBecomingは実に衝撃的だった。

 ネットフリックスのミシェル・オバマのドキュメンタリが衝撃だったのは、当初イメージしていたものとは、内容が全く違ったからだ。ブッシュの妻とは違うキャリア型のファーストレディとしても注目してたこともあって、なんの疑問も持たずに、ドキュメンタリーの中心テーマは、バラク・オバマの大統領任期時代のミシェル・オバマの成果や国の代表の妻としての葛藤なんかの話かな、と思って見始めたから。

だが、ドキュメンタリーで展開された中心テーマは、彼女の黒人としてのファーストレディの立ち位置、米国に巣食う「黒人差別」に対して、彼女がどのように立ち上がってきたか。米国外の私から見れば「グローバルに活躍し注目されていたミシェル・オバマ」だけれども、ネットフリックスで描かれたストーリは、めちゃくちゃドメスティックで、正直がっかりした。ミシェル・オバマは、『Becoming』という書籍を上梓して、全米ツアーに出かけるというのがベースのプロットだが、講演先で彼女が行うのは、若い黒人たちへの働きかけだったり、励ましだったり、自分の体験を語り合うワークショップだし、トークショーで話されることは、黒人としていかに生きるべきか、自分を誇りに思うか、ということだ。

閲覧後はしばらくモヤモヤしていたんだけれども、今改めて考えてしまっているのは、最近のジョージ・フロイドの件があったから。黒人差別の話とか、折に触れ耳にしたりすることはよくあるが、ありとあらゆる層のありとあらゆる場所で、この課題は米国で根強く残っていることを、ミシェル・オバマのドキュメンタリで改めて目の前に出されて、つい躊躇してしまったんだと思う。黒人としての立ち位置は、一般人だけではなく、いわゆる曲がりなりにも8年間の間国を動かしていたトップ層の人にとってもドキュメンタリで一つの主要テーマとなってしまうような事柄であるということに、たまらなく恐れを感じる。

米国に4年間ほど暮らしていた時にも同じことを考えていたことを思い出す。私が思い描いていた米国は、黒人・黄色人種・白人・ヒスパニックなど、様々な人が混じり合って住む国だけれども、国内では、目に見えない線引きがあちこちにあった。私は、スイス人と住んでいたし、欧州人がたくさんいる留学生の集まりに顔を出していたから多国籍に浸っていたけれども、よく思い返すと白色・黒色米国人との交流はそこまでなかった。私が交流のあった大学の米国人学生は、日本人留学生か、日本系かアジア系米国人のグループだし、白人から誘われるときは、相手は決まって欧州留学生か、アジア専門と言われる人たちだった。(そういえば黒人の米国人の知り合いは皆無だ)私の知る米国は、主に大学キャンパス内だから、色々と見えてない部分もあると思うが…。

欧州は、今でも身分社会と言われるし実際にそうだと思う。だけれども、こと一般レベルにおける人種交流に関しては、見せかけの融合ではなくて、本当に混じっている部分も多分にある。人種を超えた結婚も普通にたくさんあるし、黒人もアジア人も北欧人も学校・職場・クラブでも、米国で経験したような自然と人種で別れるなんてことはなくて、同じグループだ。少なくとも、米国よりは人種で別れてない。

今回のジョージ・フロイドの件がメディアで報道された時、娘がはじめに言ったことは、ちょっと未来に期待してもいいかなと思わされる発言だった。少なくとも、娘はデンマークダイバーシティの良い面を学んでいるし、身につけているようだった。私よりもはるかに、民族、性的嗜好に対する差別意識というところからは超越している。

参考

北欧は多様性へのマインドセットをいかに根付かせているか / ジェンセン美佳、内田真生 | SYNODOS -シノドス-